2月の生産予測調査では、新型コロナウイルス感染症による影響は十分織り込まれていないものの、アニマルスピリッツ指標等から生産マインドに弱気な側面がみられた。 2020年3月17日
経済解析室では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査しています。今回は、2月初旬に調査した2月と3月の生産計画の状況と、2月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介します。
2月の生産計画とその補正値
2月の生産計画については、前月比5.3%の上昇を見込むという結果になっています。この計画どおりに実際に生産されれば、2月の鉱工業生産の実績は、3か月連続の前月比上昇となります。
3月の生産計画は、この2月計画からマイナス6.9%の低下という生産計画になっています。
ただし、今回の調査結果については、2月当初の生産計画に基づくものであるため、新型コロナウイルス感染症の影響は十分には織り込まれていません。そのことに留意して今回の調査結果を見る必要があります。
毎月、生産計画に対して生産実績は下振れする傾向にあります。そこで、調査月の結果については、その生産計画に含まれている実績からの「ずれ」を統計的に処理して、補正計算をしています。今回の調査結果で計算したところ、2月の結果については、前月比2.0%程度の上昇になるという結果でした。
生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ
この生産計画の伸びを1月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになります。
2月は調査結果そのままの前月比でみれば、前月比5.3%の上昇で指数水準は105.1となる計画ですが、この2月計画値に含まれる傾向的なバイアスを補正すると、前月比2.0%の上昇で指数水準は101.8となる推計結果となります。
3月の生産計画は、仮に2月に企業が生産計画値の前月比をそのまま達成したとすると、その水準から前月比マイナス6.9%の低下となり、97.8の指数水準まで低下することになります。実際には、2月の生産が計画値を下回ると、2月に生産できなかった分が3月に生産されることもあるため、現時点では判断が難しい面もありますが、先述の企業の生産計画の上方バイアスを考えると、3月の生産は、この計画値より低下することが考えられます。
生産計画の強気と弱気
前年実績と生産計画の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となります。
2月の生産計画は、前年同月実績比マイナス2.3%と2か月ぶりの低下を見込んでいます。さらに翌3月計画も前年同月実績比マイナス3.5%と低下が続きそうです。
また、生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっています。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどのくらい変動したのかを予測修正率といいます。
2月の予測修正率はマイナス1.4%となり、5か月連続で下方修正されています。予測修正率からは、2月は弱気の側面がみられる結果となっています。
各社品目ごとに生産計画を上方修正した数と下方修正した数を比較して、その比率の差分を計算した指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用しています。
2月調査結果では、アニマルスピリッツ指標はマイナス7.2となり、1月調査結果でのマイナス7.7から2か月ぶりに上昇しています。
この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向が見られています。アニマルスピリッツ指標は4か月連続でマイナス5を下回り、月々の上下動をならしたトレンドで見てもマイナス5を下回るなど、このところの動きに弱さがみられます。この傾向が今後も続くかについて、注意して見ていきたいと考えます。
2月調査では、強気の割合が増加、弱気の割合が減少したことにより、アニマルスピリッツ指標は上昇しました。しかし、生産計画を下方修正した弱気の割合が3割を超えた状態が続くなかで、2月は上方修正した強気の割合は、小幅な増加にとどまっています。
2月の調査結果では、予測修正率やアニマルスピリッツ指標の動きから生産マインドは弱気な側面がみられる結果となりました。
なお、冒頭で述べたように今回の調査結果には新型コロナウイルス感染症の影響は十分に織り込まれていません。そのため、今後、例年の傾向以上に生産実績や生産計画が変わる可能性もあることから、生産の先行きや企業のマインドに関しては、引き続き注意深くみていく必要があると考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/result-1.html
- 予測指数解説集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/sanko/result-yosoku-sanko-202002.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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