4月の生産予測調査では、予測修正率の大幅な低下やアニマルスピリッツ指標の水準の低さなど、生産マインドにはかなり弱気な面がみられた。 2020年5月20日
経済解析室では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査しています。今回は、4月初旬に調査した4月と5月の生産計画の状況と、4月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介します。
4月調査の生産計画
4月の生産計画については、前月比1.4%の上昇を見込むという結果になっています。この計画どおりに実際に生産されれば、4月の鉱工業生産の実績は、3か月ぶりの前月比上昇となります。
5月の生産計画は、この4月計画からマイナス1.4%の低下という生産計画になっています。
ただし、今回の調査結果は、4月当初の生産計画に基づくものですが、4月上旬以降も、新型コロナウイルス感染症の影響は世界的に拡大・継続しているのみならず、我が国でも新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が行われ、4月16日には全都道府県が緊急事態措置の対象となるなど、その影響は内外ともに広がっています。そうした情勢変化の影響は十分には織り込まれておらず、また企業も先の見通しを立てることが難しくなっています。そのことに留意して今回の調査結果をみる必要があります。
生産計画の強気と弱気
調査結果から、企業の生産活動に対するマインドをみる場合、生産計画と前年実績の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となります。
4月の生産計画は、前年同月実績比マイナス6.3%と3か月連続の低下を見込んでおり、弱気の側面がみられます。
また、生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっています。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどのくらい変動したのかを予測修正率といいます。
4月の予測修正率はマイナス7.1%と大幅なマイナスとなり、7か月連続で下方修正されています。予測修正率のマイナス7.1%は今基準内最大の低下幅であり、基準は異なるもののリーマンショック当時最大のマイナス12.1%(2009年1月調査)、東日本大震災当時のマイナス15.9%(2011年4月調査)の予測修正率に次ぐ大幅な低下となっています。
このように予測修正率からは、4月は弱気の面が急速に進んだ結果となっています。
各社品目ごとに生産計画を上方修正した数と下方修正した数を比較して、その比率の差分を計算した指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用しています。
4月調査結果では、3月のマイナス18.2からわずかに上昇したとはいえ、アニマルスピリッツ指標はマイナス17.9となり、3月に引き続き、とても低い水準にとどまっています。
この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向が見られています。アニマルスピリッツ指標は6か月連続でマイナス5を下回り、月々の上下動をならしたトレンドで見てもマイナス5を大きく下回る傾向がみられるなど、生産マインドに弱さがみられます。
4月調査以降も新型コロナウイルス感染症の影響は国内外で続いていることから、今後の動きについても注意して見ていきたいと考えます。
4月調査の内訳をみると、強気の割合が21.8%、弱気の割合が39.7%となっています。弱気の割合が、2011年4月調査以来の高い割合となりました。
4月の調査結果では、前年同月実績比や予測修正率、アニマルスピリッツ指標から生産マインドはかなり弱気な面がみられる結果となりました。
なお、冒頭で述べたように今回の調査結果には、新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化の影響は十分には織り込まれていません。そのため、今後、例年の傾向以上に生産実績や生産計画が下振れしていく可能性もあることから、生産の先行きや企業のマインドに関しては、引き続き注意深くみていく必要があると考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/result-1.html
- 予測指数解説集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/sanko/result-yosoku-sanko-202004.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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