本年6月の鉱工業生産は、前月比2.7%と5か月ぶりの上昇。感染症の影響からの回復がみられ、今基準内2番目の上昇幅となった。6月の基調判断は「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」と上方修正。 2020年7月31日
- 6月生産は前月比2.7%と、5か月ぶりの上昇
- 6月は10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下
- 出荷は前月比5.2%と、生産より大幅な上昇
- 在庫は3か月連続低下
- 6月の基調判断は、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」と上方修正
6月生産は前月比2.7%と、5か月ぶりの上昇
本年6月の鉱工業生産は、季節調整済指数80.8、前月比2.7%と、5か月ぶりの前月比上昇となりました。6月当初の企業の生産計画では前月比5.7%上昇、これに含まれる過去のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比0.2%の上昇となっていましたが、試算値を大幅に上回る上昇となりました。
生産は、2月以降新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、4か月連続での低下となり、指数水準も大幅に低下していましたが、6月は上昇に転ずることとなりました。6月の季節調整済指数80.8は、今基準内で2番目の低水準にありますが、上昇幅は今基準内で2番目の上昇幅となっています。
一方、四半期ベースでは、本年第2四半期は前期比マイナス16.7%の低下となり、今基準内で最大の低下幅となりました。
6月は10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下
6月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下という結果でした。
6月は、特に自動車工業の上昇寄与が大きく、次いで生産用機械工業、プラスチック製品工業等が上昇に寄与していました。
上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比28.9%の上昇で、5か月ぶりでの大幅な上昇となりました。普通乗用車、軽自動車、自動車用エンジン等が上昇要因となっています。新型コロナウイルス感染症の影響で、大幅な生産調整が行われていたところから、6月は生産を戻しつつあることや、海外からの部品調達も改善されてきていることなどが上昇の要因としてあるようです。
上昇寄与2位の生産用機械工業は、前月比10.2%の上昇で、2か月ぶりの大幅な上昇でした。ショベル系掘削機械、フラットパネル・ディスプレイ製造装置、金型等が上昇要因となっています。感染症の影響による生産調整からの回復や、受注の増加が上昇の要因としてあるようです。
上昇寄与3位のプラスチック製品工業は、前月比6.4%の上昇で、4か月ぶりの上昇でした。プラスチック製機械器具部品やプラスチック製容器(中空成形)等が上昇要因となっています。受注の増加が上昇の要因にあるようです。
出荷は前月比5.2%と、生産より大幅な上昇
6月の鉱工業出荷は、季節調整済指数80.8、前月比5.2%と、4か月ぶりの大幅な上昇となりました。今基準内で最大の上昇幅となっており、6月の出荷は、生産より大幅な上昇となりました。国内外での経済活動の再開の動きもあり、内需・外需とも前月比で増加したことが、出荷の上昇につながったものと考えられます。
業種別にみると、全体15業種のうち、12業種で出荷が上昇、3業種で低下となりました。
上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、生産用機械工業等となっていました。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.7%の上昇、最終需要財の出荷は前月比7.1%の上昇でした。
最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比6.5%、4か月ぶりの上昇となりました。特に耐久消費財の出荷が、乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比21.7%と、5か月ぶりの上昇となりました。非耐久消費財の出荷は前月比4.1%と、4か月ぶりの上昇となりました。
一方、設備投資に使われる財である資本財(除.輸送機械)の出荷は、前月比6.5%と、2か月ぶりの上昇となりました。
また、建設財は、前月比2.0%と、4か月ぶりの上昇となりました。
在庫は3か月連続低下
6月の鉱工業在庫は、季節調整済指数100.8、前月比マイナス2.4%と、3か月連続の低下となりました。6月は出荷が大きく上昇するとともに、在庫調整が行われたことが、在庫の低下要因として考えられます。
業種別にみると、15業種中、13業種が低下、2業種が上昇でした。低下寄与が大きかった業種としては、自動車工業、電子部品・デバイス工業、鉄鋼・非鉄金属工業等が挙げられます。
在庫循環図をみても、在庫は減少してきており、このところの生産調整により、在庫調整が進んできている様子が感じられます。
6月の基調判断は、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」と上方修正
本年6月の鉱工業生産は、5か月ぶりの前月比上昇となりました。新型コロナウイルス感染症の影響で2月以降、生産の低下が続いていましたが、6月は上昇に転じ、生産水準は低いものの、今基準内で2番目の上昇幅での上昇となりました。
この背景には、5月まで感染症の影響により、国内外での需要が低迷したことなどから、自動車工業を始め大幅な生産調整が行われていましたが、国内外での経済活動再開に伴い、需要の回復や供給制約の解消も徐々に進み、6月は生産に回復の動きが現れたものと考えられます。
また、先行きに関しては、企業の生産計画では7月、8月は上昇となっています。感染症の影響については引き続き注意してみていく必要はあるものの、企業の生産計画に元々含まれている上方バイアスを考慮しても、7月は上昇が見込まれ、持ち直しの動きが続くことが期待されるところです。
こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の6月の基調判断は、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」と上方修正し、7月以降の生産の動向についても、十分注意してみていきたいと考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202006s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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