2021年3月の生産予測調査では、3月計画は予測修正率が上方修正し、アニマルスピリッツ指標は8か月連続のプラスとなるなど、企業の生産マインドは改善の動きが続いている。 2021年4月19日
経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。
今回は、3月初旬に調査した3月と4月の生産計画の状況と、3月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介します。
3月の生産計画とその補正値
3月の生産計画は、季節調整済指数で前月比マイナス1.9%の低下を見込むという結果になりました。この計画どおりに生産されれば、3月の鉱工業生産の実績は、2か月連続の前月比低下となります。
4月の生産計画は、この3月の計画から9.3%の上昇という計画になっています。
なお、鉱工業指数は2月確報で2020年分の年間補正を行い、2020年1月から前月2月までの季節調整値も見直されていますが、他方、企業の生産計画の3月調査値は2020年分の年間補正前のものであり、季節調整値はまだ見直されていません。このため、上の生産計画の前月比を鉱工業生産と比較するに当たっては、幅を持ってみておく必要があります。さらに、今回の調査結果については、3月当初の生産計画に基づくものであるため、感染症の感染動向やサプライチェーンの状況等、3月上旬以降の情勢変化の影響は十分に織り込まれていないと考えられます。これらのことに留意して今回の調査結果をみる必要があります。
毎月、生産計画に対して生産実績は一定のバイアスが生じる傾向にあります。そこで、調査月の生産計画については、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に推計し、補正計算を行っています。今回、3月の見通しについて計算したところ、3月は、前月比マイナス1.4%程度の低下になるという結果でした。
生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ
生産計画の伸びを4月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになります。
2月の鉱工業生産指数実績(確報)は95.6であるため、調査結果の伸び率マイナス1.9%をそのまま当てはめれば、3月の指数水準は93.8となる見込みです。
更に、4月の生産計画は、前月比9.3%上昇の見込みですので、仮に3月の生産が計画通りであったとすると、4月の指数水準は102.5となります。
ただし、生産計画と生産実績の間には傾向的なバイアスがありますので、このバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、3月の伸び率は最頻値ではマイナス1.4%程度となり、この場合、3月の指数水準は94.3と見込まれます。
なお、冒頭述べたように、今回の調査結果には3月上旬以降の、感染症の感染動向やサプライチェーンの状況等をめぐる情勢変化の影響は十分には織り込まれていないと考えられるため、これらが3月以降の生産にもたらす影響に十分注意する必要があります。
生産計画の強気と弱気
生産計画を、前年同月の実績と比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかを判断する一つの目安となります。
3月の生産計画を原指数で見ると、前年同月実績比プラス5.9%となり、2か月連続で前年同月実績を上回りました。
ただ、前年同月実績比を見るにあたっては、前年の実績が感染症拡大の影響により大きく減少している点に注意が必要です。前年2020年の3月生産実績はマイナス7.6%の減少であり、この前年との比較では今回3月の生産計画はプラスとなっていますが、感染症の影響を受けていない前々年2019年3月の生産実績と比較してみれば生産計画はマイナスであり、それほど高い水準ではありません。
つまり、前年同月実績比からは、2021年3月は、感染症拡大により生産が大きく落ち込んだ時期からみれば企業の生産マインドは改善が進んだと言えますが、企業のマインドがどの程度強気であるかどうかは、この指標では評価が難しいところです。
次に、1か月前時点で調べた生産計画が、生産開始直前に調べた生産計画と比べ、どの程度変動したかを示す数値が予測修正率となります。
3月の予測修正率はプラス0.8%と、2か月ぶりの上方修正となり、この数値からは、企業の生産マインドは改善の動きにあるものと考えられます。
生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでいます。この指標は、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量るために活用しています。
この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向がみられています。
生産計画の3月調査結果では、アニマルスピリッツ指標は11.1と8か月連続でプラスとなりました。月々の上下動をならしたトレンドでも大きくプラスとなっており、生産マインドには依然強気が優勢な様子がみられます。
3月調査では、強気の割合が3.1ポイント上昇し、弱気の割合はマイナス4.6ポイントの低下となったため、アニマルスピリッツ指標は前月から上昇となりました。
昨年6月以降、国内外での経済活動の回復が進んできたことにより、企業の生産マインドの改善も進みましたが、引き続き、企業の生産マインドは強気が優勢な結果となっています。
3月の調査結果では、予測修正率やアニマルスピリッツ指標がプラスとなっていることから、企業の生産マインドは強気が優勢な状況が続いているとみられます。
他方で、今回の生産計画には感染症の感染動向やサプライチェーンの状況等、3月上旬以降の情勢変化は十分に織り込まれていないと考えられることから、これらが生産の先行きや企業のマインドに影響を生じさせないか、4月以降の調査でも注意深くみていきたいと考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/result-1.html
- 予測指数解説集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/sanko/result-yosoku-sanko-202103.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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