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印刷の中心は文字からビジュアルへ?
4月は新年度のスタート、入学、入社などイベントが目白押しですが、4月2日は週刊誌の日と国際子供の本の日、4月6日は新聞を読む日など、新聞業や出版業にまつわる記念日が続いています。
第3次産業活動指数における新聞業と出版業の推移を見ると、残念ながら、近年下落傾向にあります。また、鉱工業指数の個別品目を用いて、新聞業や出版業が使用するハードウェアである「印刷用品」というカテゴリーの指数を新たに作成したところ、やはり下落傾向にあることがわかりました。新聞や書籍など、紙に印刷された文字媒体の需要が減少するのに伴って、印刷用品の生産も下落する傾向にあります。
もちろん、新聞業や出版業は、この事態に手をこまねいている訳ではなく、新聞の電子版や電子書籍など、デジタルな媒体を通じた需要喚起策を講じており、実際に我々にとって身近なものになっています*。また、印刷業においても、大手の印刷会社が、再生医療分野で用いる細胞シートの実用化に印刷技術を提供するなど、新たな分野での活動が増えています。
では、新聞や書籍の紙媒体での発行部数減少と共に、旧来の印刷は衰退してしまうのでしょうか。そこで、新聞業や出版業以外に印刷用品を用いる業種という観点から、第3次産業活動指数の広告業の内訳項目を用いて、「印刷系広告業」の指数を新たに作成してみたところ、こちらはむしろ上昇傾向にあることがわかりました(下左図)。
今のところ、印刷用品の生産を押し上げる程の力はないようですが、新聞業や出版業で文字の印刷物への需要が減少しているところ、ビジュアルに訴える印刷物である広告向けの需要は増加しており、印刷用品の下落傾向を一部食い止めているようです。この背景には、人に何かを訴える主要なフィールドが、文字からビジュアルへ移りつつある、という変化があるのかも知れません。
このことを裏付けるように、印刷用品の中でも「おう版印刷(グラビア印刷)」だけは、他の2つの印刷方式に比べて高い水準で推移しています(上右図)。この「おう版印刷」は写真印刷とも呼ばれ、高精細な印刷に適しており、ビジュアルに凝った印刷物に使われるそうです(ただし、いわゆる雑誌のグラビアは、現在は大部分がオフセット印刷です)。印刷においては、「出版から広告へ」という流れが見られるようです。
2020年には東京オリンピックの開催を控え、これからは街中の様々な所で広告が溢れてくるでしょう。印刷の動向がどうなるのか、要注目です。
*第3次産業活動指数の「新聞業」と「出版業」は、それぞれ電子媒体による発信を含んでいません。