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第3節 租税条約

1.租税条約の役割

 租税条約は、国際的な二重課税を回避するため、両国間の投資・経済活動に関し、課税できる所得の範囲等を調整するものである。また、その締結によって、両国の税務当局間の相互協議や情報交換、徴収共助等の枠組みが構築され、租税に関する紛争の解決や脱税及び租税回避行為の防止が図られることとなる。

 租税条約の締結により、海外進出企業に対する課税の法的安定性が確保されるとともに、我が国企業が海外で稼いだ収益の国内還流の円滑化にも資するなど、健全な投資・経済交流が一層促進されることが期待される。

2.租税関連条約の新規締結・改正状況

 我が国は、2014年4月末現在、60の租税関連条約を締結し、80か国・地域との間に適用されている(第Ⅲ-1-3-1表)。

第Ⅲ-1-3-1表 我が国租税関連条約締結国・地域一覧

 近年、中東等資源国との租税条約の新規締結や先進国との改正、及び国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資する情報交換を主体とした租税協定の締結が進められている。特に、ニュージーランド、米国、スウェーデン、英国などの先進国との改正については、税務当局による相互協議の開始から一定期間が経過しても事案が解決されない場合に、税務当局以外の第三者の関与を得て解決を促すための仲裁制度を導入するとともに、投資所得(配当、利子等)に対する源泉地国における課税を軽減又は免除する内容になっている。また英国との租税条約の改正においては、2010年のOECDモデル租税条約の改訂に合わせ、外国法人・非居住者の支店等(恒久的施設)に帰属する事業利得の算定に際して、本支店間の内部取引を独立企業原則に基づき、より厳格に認識することを規定した条文を、我が国として初めて導入している。

 今後とも、我が国産業界のニーズや我が国課税権の適切な確保等の観点を総合的に勘案し、企業の海外展開の支援に資する租税関連条約のネットワーク拡充の取組を加速することが重要である。具体的には、未締結国との新規締結を進めるとともに、既存条約を改正し、海外での事業活動に対する課税所得の範囲の明確化、投資所得に対する源泉地国における限度税率の引下げ、仲裁制度の導入など内容を充実させることが必要である(第Ⅲ-1-3-2表)。

第Ⅲ-1-3-2表 最近の経緯・現状

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