アニマルスピリッツ指標が大きく改善しており、2018年3月の製造工業の生産マインドは、大きく「強気」に振れていました。 2018年4月17日
経済解析室では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査しています。今回は、3月と4月の生産計画の状況と、そこから計算できる3月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのを紹介します。
平成30年3月の生産計画とその補正値
平成30年3月の生産計画については、前月比0.9%の上昇を見込むという結果になっています。
ここ数年の中では非常に高い生産実績水準となった昨年12月の生産水準にはまだ及ばないものの、この計画通りに実際に生産されれば、3月の鉱工業生産の実績は、今年1月の前月比マイナス3.1%という大きな低下を多少は回復することになります。
さらに、4月の生産計画は、この3月計画から前月比5.2%と、大きな増産という生産計画となっており、昨年12月の生産水準を大きく上回るというものとなっています(予測調査の調査結果そのままでみると、対昨年12月実績比で、3%上回る生産水準という計画)。

毎回、調査月の結果については、その生産計画に含まれている実績からの「ずれ」を統計的に処理して、補正計算をしています。今回の調査結果で計算したところ、3月の結果については、前月比0.5%程度の上昇に留まるという結果でした。
この補正計算からすると、今年第1四半期は、前期比ではマイナスとなる可能性が高いと言わざるを得ません。

生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ化
この生産計画の伸びを2月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化するとこのようになります。3月生産計画の上昇幅は、調査結果そのままでも、補正計算したものでも、今年1月の大きな低下幅と比べて、小さな動きとなっています。
このグラフを見る限り、昨年12月と今年1月の乱高下を挟んで、鉱工業生産の動きは、落ち着いた動きに戻っていますが、水準的には、昨年10月のレベルに戻っているという印象を持ちます。

4月までの生産計画とその補正を加味して、鉱工業生産のトレンドを、ベースケース、アップサイドケース、ダウンサイドケースに分けてグラフにしています。アップサイドシナリオでは、4月まで上昇基調が続き、ここ数年の最高レベルとなります。ベースシナリオでも、はっきりとした上昇基調の動きとなっています。ダウンサイドシナリオでは、低下傾向が鮮明になります。

生産計画の強気と弱気
前年実績と生産計画の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となります。
3月の生産計画は前年同月実績比でプラス7.3%と20か月連続で上昇となっています。20か月連続というと、平成28年8月調査からということになります。引き続き、この数字からは強気の生産計画が続いているということもできます。ただ、その上昇幅が徐々に低下してきていることも指摘しなければなりません。

生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっています。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどれ位変動したのかを%で表示しているものを予測修正率といいます。
3月の予測修正率は0.9%プラスで、3月の生産計画は上方に修正されています。これは、昨年10月実施の調査における10月計画の上方修正以来5か月ぶりのことです。
この生産計画の上方修正の面からも、3月は強気の生産計画となっていることを伺うことができます。

アニマルスピリッツ指標
各社、各品目別に、生産計画が上方修正された数と下方修正された数を比較して、その比率の差分を計算しています。この指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用しています。
3月調査結果では、アニマルスピリッツ指標は1.8となりました。2月調査結果から計算したもの(マイナス2.7)から大きく上昇しています。
これまでのこの指標の推移と景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面に入るということが確認できています。そこからすると、プラスの1.8は高い数値と言え、企業マインドが盛り上がっている様子が窺えます。
とはいいつつも、アニマルスピリッツ指標のトレンドはダウンスロープとなっていることも確かです。

3月調査では、計画を上方修正している強気品目の割合が上昇し、計画を加法修正している弱気品目の割合が低下し、差し引きで、アニマルスピリッツ指標は大きく上昇しています。
前年実績との比較でも、予測修正率やアニマルスピリッツ指標で見ても、3月の生産マインドは、強気になっていると言えるでしょう。

ただ、2月実績までのデータで描く在庫循環図を見ると、「在庫積み上がり局面」との境界線上に位置づけられており、生産に比べて出荷の勢いが弱いという点からも、生産に「勢いがあり過ぎる」という面もあるように見受けられます。

<参考:業種別の生産計画の動き>
先行き生産計画では、3月は微増産計画だが、4月も大きめの増産計画。4月の生産計画の水準は、はん用・生産用・業務用機械工業、資本財の主導で、昨年12月の生産実績をも上回る強気の生産計画となっている。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/result-1.html
- 予測指数解説集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/sanko/result-yosoku-sanko-201803.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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