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「グローバル生産性」計測の試み(その2);輸送機械工業のグローバル生産性は5年前と比較してマイナス7.4%低下、ただし、それは国内外におけるグローバルな雇用拡大の結果
2017年1月25日

昨今、日本企業の生産性に対する関心が高まっていますが、日系製造業のグローバル化が進む現状を踏まえると、日本企業の生産性の変化を、海外拠点における生産性変化とあわせて評価することも必要であると考えられます。

経済解析室で作成しているグローバル出荷指数を用いて、簡易的に生産性を計測すると、やはり国内生産性は横ばいで、拡大著しい海外現地生産における生産性が大きく向上していました。

意外にも、輸送機械工業のグローバル生産性は低下

製造業全体のグローバル生産性は、海外要因が全体をけん引する形で4.1%上昇となりましたが、業種ごとのグローバル生産性の変化には、やはり大きな違いがありました。

特に、日本の製造業の中核であり、グローバル化も進んでいる輸送機械工業のグローバル生産性が、国内要因の大幅な低下によって、2010年比でマイナス7.4%と低下している点に目が行きます。


リーマンショック時に低下した生産性が戻り切れていない

輸送機械工業のグローバル生産性は、リーマンショック前は、基準年である2010年のグローバル生産性のレベルを超えており、2007年にはピークである105.9というレベルとなりました。その後2009年に大きく低下し、2010年に一旦回復するものの、2011年の東日本大震災時のサプライチェーンの分断の影響により、再び大きく下落しました(国内出荷量の減少)。

それ以降の輸送機械工業のグローバル生産性の回復ペースは鈍く、2015年に92.6と2010年比でマイナス7.4%低下したままで、ピークである2007年比ではマイナス12.6%低下と、なかなか以前の水準に戻り切れません。


海外生産性は向上しているが、2015年国内生産性は急落

輸送機械工業の海外生産性と国内生産性の推移を見てみると、ここ数年は、海外生産性は上昇し、国内生産性は横ばい圏の動きとなっていましたが、2015年は国内生産性が大きく低下し、リーマンショックの影響で生産性が急落した2009年以来の低水準となりました。

海外拠点の生産性は、リーマンショック前の水準には多少及ばないものの、2010年を1割近く上回る水準にまで回復しています。一方、国内拠点の生産性は、以前の水準を大きく下回ったままであり、上向く感じではありません。


生産性低下の主要因は、雇用拡大にあり

輸送機械工業における生産性の分子である海外・国内出荷と分母である海外・国内従業員数の推移を見てみましょう。

北米を中心とした海外市場の好調、構造的な日本国内市場の伸び悩みから、出荷指数は海外と国内で異なる動きをしており、それが海外と国内の生産性の動きに違いを生み出しています。

しかし、より大きな生産性「低下」の要因は、輸送機械工業がグローバルに従業員数を拡大していることに求められるものと思われます。海外従業員数が、リーマンショック前を3割上回る水準になっているだけではありません。国内出荷が低下しているにもかかわらず、国内従業員数が2010年の2割増しで、リーマンショック前の水準に回復しています。

これほどの雇用量のグローバルな拡大があれば、輸送機械工業のグローバル生産性が多少低下するのも当然かと思われます。


今回計算しているグローバル生産性は、数量ベースの物的労働生産性を計算するものとなっており、名目出荷金額や付加価値額を用いた価値労働生産性(付加価値労働生産性)を計測するものとはなっていません。このため、業種別のグローバル生産性の動きと、業種の収益性とが、異なる方向に変化することがあり得ます。

輸送機械工業については、収益水準は高いものの、生産性は低下しているという、意外な結果でした。ただ、その収益を背景に、国内拠点だけはなく、海外現地法人が雇用を大きく拡大させた結果、グローバル生産性が「低下」している訳ですから、必ずしも悲観すべきものではないと思います。

輸送機械工業以外のグローバル生産性の変化については、「グローバル生産性」計測の試み(その3)の記事で改めてご説明したいと思います。


ミニ経済分析「日系製造業の海外拠点の生産性は向上、国内生産性は横ばい;「グローバル生産性」計測の試み」のページ
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20170125minikeizai.html
              

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