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日本の2大コンテンツ、ゲームとアニメの制作企業の実像を比較する(その4);コンテンツ制作の外部委託といっても、ゲームとアニメでは態様が大分異なることがデータから分かる。ゲームは内外分業型で、アニメは一蓮托生型。 2017年7月27日

情報通信業基本調査(注1)等のデータから、日本の2大コンテンツであるゲーム制作企業(以下、ゲーム会社)とアニメの制作企業(以下、アニメ会社)の実像に迫る記事を連載しています。

前回は従業員構成の異同や作品単価との関係を確認してみましたが(日本の2大コンテンツ、ゲームとアニメの制作企業の実像を比較する(その3);従業員規模は、ゲーム会社が倍程度の大きさだが、正社員比率が高いことは共通している。この正社員比率は、どうも作品の単価が上がると増加している模様)、ここでは、開発・制作業務の外部委託の様相の違いという切り口で比較をしていきたいと思います。

外部委託;ゲーム会社の海外委託の割合が高い。

上の左のグラフは、ゲーム会社とアニメ会社について、外部委託を行ったと答えた企業の割合を表したものです。何れも外部委託が広く行われており、推移としては緩やかに上昇しています。

ただ、アニメ会社については、2011年度に一時的に委託率が上昇しているのが目立ちます。情報通信業基本調査の他のデータから見ると、この年度は、アニメ作品の単価が上昇すると同時に、正社員比率の上昇が見られた時期です(日本の2大コンテンツ、ゲームとアニメの制作企業の実像を比較する(その3))。この事と併せてみると、当時のアニメ会社の制作体制において、作品単価の上昇と同期する形で、契約社員の正社員への転換が生じるとともに、外部委託が増加していったものと推察できます。

上の右の2つのグラフは、外部委託金額の推移を、国内外別に表したものです。ゲーム会社もアニメ会社も、2012年度に海外への外部委託の割合が増加しています。特に、ゲーム会社の海外委託は急増しており、ゲームとアニメで海外委託の割合に大きな差が生じています。ここには、海外市場の位置づけの違いや、アニメとゲームにおけるCG(コンピューター・グラフィックス)、特に3DCG(注2)化の度合いの違いが影響しているのかもしれません。

ゲーム会社は内外分業、アニメ会社は内々分業

次に、スポット的な委託取引先を除いて、安定的な外部委託先との関係を見るために、ゲームについては「関係会社」、アニメについては「長期取引先(1年以上)」への外部委託状況(金額ベース)を比較してみました。

ゲーム会社が、関係会社に委託する割合は2015年度で約1/4と高くはありません。また、国内外の別を見ると、海外の関係会社への委託が多いことがわかります。これは、特に大作ゲームは海外展開することを前提に、最初から海外版の制作を海外の関係会社に委託していることによるものと考えられます。また、先進的なCGレンダリング技術(コンピューター・プログラムを用いて画像・映像・音声などを生成すること)の取り入れに積極的なゲーム会社が海外の技術を買っているという面も考えられます。

一方、アニメ会社が長期取引先に委託する割合は4割程度と、ゲーム会社と比べると高い水準です。但し、推移としては低下傾向にあり、スポット的な委託が増えてきています。これには、通常短いクール(3か月を1単位とした放送期間・回数の単位)で放映される深夜帯アニメが増加したことが影響しているのかもしれません(注3)

まとめると、ゲーム会社はスポット委託が多く、安定した委託は海外関係会社に行うという、内外分業型、アニメ会社は、国内の安定取引先とスポット委託が併存している、内々分業型の委託構造であると言えます。

ゲーム会社は少額でスポット的に、アニメ会社はまとまった額で一蓮托生

上のグラフは本数ベースと金額ベースの委託率を比較したものです。ゲーム会社の本数ベースの委託率は増加傾向にあり、2015年度には自社開発コンテンツ数の約4倍にまで達しています。しかし、金額ベースでは横ばいの傾向で、売上高に占める割合は3割程度に過ぎません。これは、1件あたりの委託業務の規模が小さいことを意味しており、ゲーム会社の外部委託がスポット的なものが多いという事実ともつじつまが合っています。

これに対して、アニメ会社の本数ベースの委託率は年によってばらつきはあるものの、自社開発コンテンツ数の1.5倍を超えたことがありません。2015年度はほぼ1倍と、1つのアニメ作品につき平均1件の委託で、中には外部委託に出さない作品もあると考えられる水準です。しかし、金額ベースの委託率は5割前後となっており、売上の約半分を外部委託に費やしています。これは、委託業務1件あたりの規模が大きいことを意味しており、アニメ会社の外部委託先に国内の長期取引先が多いことと併せると、「一蓮托生」で作品を制作している姿が浮かびあがってきます。

一口にコンテンツ制作の外部委託とは言っても、ゲームとアニメで大分その態様が違うことがデータ比較から浮かび上がってきて来ました。

次回は、ゲーム会社とアニメ会社で、コンテンツの権利保有の状況に、どのような違いがあるのかという切り口で、実像に迫ってみようと思います(日本の2大コンテンツ、ゲームとアニメの制作企業の実像を比較する(その5);同じコンテンツビジネスでも、権利保有の状況がアニメとゲームで大きく異なる。ゲーム会社はコンテンツの権利の100%近くを確保、アニメ会社は作品の権利を半分も保持していない。)

(注1)ゲーム会社とアニメ会社については、当該事業に属する事業所を有する企業のうち、資本金額又は出資金額3,000 万円以上の企業を調査対象としています。

(注2) 三次元コンピューター・グラフィックス。プログラムで仮想空間を作り、そこに仮想の物体や人物、カメラを配置して撮影をする技術のことで、実写映像並のグラフィックスを制作することが可能。

(注3)一般社団法人日本動画協会のアニメ産業レポートによると、2015年には深夜帯のアニメ新作制作分数が、全日帯(5~23時)のそれを上回った。

ミニ経済分析「日本の2大コンテンツ、ゲームとアニメの制作企業の実像を比較する」のページ
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20170727minikeizai.html

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