2018年9月の全産業活動は前月比マイナス0.9%の大幅低下、指数水準も昨年度以降で最も低い水準に下降。基調判断は「緩やかな持ち直しの動きにあるが、このところ足踏みがみられる」に下降修正。 2018年11月21日
- 9月は前月比低下、指数水準は大きく降下
- 9月は内訳3活動すべてが低下、サービス産業活動の低下が大きく影響
- 9月の動きの主役:サービス産業活動指数を成分分解してみると…
- 2018年9月の全産業活動の基調は、「緩やかな持ち直しの動きにあるが、このところ足踏みがみられる」に下方修正
9月は前月比低下、指数水準は大きく降下
2018年9月の全産業活動指数は、前月比マイナス0.9%と2か月ぶりの低下、指数値は104.7となりました。
先月8月はやや大きめの上昇でしたが、それを上回る大きな低下幅でした。ここ4か月で3度目のマイナスとなり、指数値はこの4か月でマイナス1.7ポイント低下、結果、昨年4月以降では最も低い水準にまで急降下しています。
なお、前年同月比は、昨年2月以来、実に19か月ぶりに低下となりました。

上の図で傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、6月にそれまでの上昇傾向からマイナス方向へ転じました。以降は、やや強めのペースでの下降という様相になっています。
2018年第3四半期の全産業活動指数は、前期比マイナス0.8%と2期ぶりの低下、指数値は105.2となりました。第2四半期は、四半期ベースではリーマンショック以降初めてとなる106台という高い水準に到達しましたが、そこから大きく後退しました。
9月は内訳3活動すべてが低下、サービス産業活動の低下が大きく影響
9月の結果を産業別にみると、建設業活動と鉱工業生産はともに前月比マイナス0.4%の低下、サービス産業活動が前月比マイナス1.1%の低下と、3活動すべてが低下となりました。先月は3活動すべてが上昇でしたが、いずれも前月の上昇幅と同等以上の低下幅となっています。
なお、全産業活動の前月比マイナス0.9%の低下うち、マイナス0.8%ほどがサービス産業活動の低下インパクトに因るもので、サービス産業活動の動きが非常に強く影響しました。

2018年第3四半期では、3活動すべてが2期ぶりの前期比マイナスでした。鉱工業生産、建設業活動が前期比1%を超える低下で、第2四半期の前期比上昇幅を超える低下幅でした。
9月の動きの主役:サービス産業活動指数を成分分解してみると…
9月の全産業活動の前月比低下には、サービス産業活動の不調が強く影響しました。このところサービス産業活動が全産業活動の動きの主役となることが多くなっています。
一方で、この9月は自然災害といった突発的な事象があり、様々な事業や消費行動に影響を与えたと考えられます。また特異的な事象という意味では、今年7月にも酷暑、豪雨といった事象がありました。このため、7月と8月、あるいは8月と9月といった単月毎の活動量の関係が、過去の経験値とは異なったものとなっている可能性があります。
そこで、サービス産業活動について、今月9月までの最新の指数値を加味した季節調整済指数値を再計算(公表値は、昨年12月までの指数値から予測推定された季節指数を用いて季節調整済指数を計算している)し、その構成要素である傾向・循環変動と不規則変動を抽出し、最近の不規則変動についてみてみました。この不規則変動に、天候不順などの突発的な変動要因が含まれている、ということになります。
方法は、第3次産業活動指数の11大分類業種毎に、今年9月までの指数値を使って季節調整済指数とその成分を再計算し、抽出された成分別に11大分類業種の加重平均を行い、サービス産業活動全体の各成分を計算しました。再計算にはX12-ARIMAを用い、投入するスペックは、業種毎に今基準で用いられているものを使用しています。
なお、季節調整指数値には、今年6月以降の公表値と再計算値で大きな差異はありませんでした(下図参照、2018年1月以前の再計算値は参考値)ので、新旧のかい離は無視して、以降の解説をすることとします。

まず目につくのは、傾向・循環変動が、今年6月以降、等しいペースで緩やかに下降している点でしょう。
そして、不規則変動は、①今年7月と9月がマイナス方向、8月はプラス方向に出ている、②8月のプラス方向変動幅の方が9月のマイナス方向変動幅よりも若干大きくなっている、③7月、8月、9月各月分を過去の同月と比べると、それぞれ今年の不規則変動はかなり大きくなっている、などがみてとれます。
9月の前月比大幅低下の要因をこれら成分で説明すると、不規則変動が8月のプラス方向変動幅の方が9月のマイナス方向変動幅よりも若干大きくなっていることから、9月の前月比大幅低下の最大の要因は8月の活動活発化の反動、次に9月固有の低下要因であり、それに緩やかなペースの低下傾向要因が加わったものということになります。
不規則変動に含まれる要素は、自然災害など誰の目にも明らかな突発的事象だけではないのですが、あえて不規則変動の動き・大きさと、過去3か月の突発的事象等を当てはめてみますと、①7月は酷暑と豪雨という2つに事象の効果がある程度相殺された(経済解析室ニュース:7月分の全産業活動指数参照)、②し好的な個人向けサービスを中心に夏休み需要、行楽需要が8月に集中した(経済解析室ニュース:8月分の全産業活動指数参照)、③9月は前月の反動に加え自然災害の影響もあり低下幅は大きくなった、ということが一つの解釈として成り立つのではないかと思います。
2018年9月の全産業活動の基調は、「緩やかな持ち直しの動きにあるが、このところ足踏みがみられる」に下方修正
2018年9月の内訳3活動はいずれも低下しました。各指数の基調判断は、鉱工業生産は「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と、判断を据え置いています。他方、サービス産業活動は「足踏みがみられる」に下方修正しています。建設業活動は、依然として「弱含みの動き」が続いています。

全産業活動全体では、9月単月としては大幅な前月比低下で、指数値は104台後半まで一気に下降しました。このほか、当月の特徴として①前年同月比が久方ぶりにマイナス、②第3四半期の前期比低下、③3か月移動平均で測る「すう勢」には弱さがみられる、などネガティブな側面も挙げられます。
各活動の動きをみると、いずれの活動も前月比、前期比ともに低下でした。
ただ、今年7~9月には、酷暑や自然災害といった複数の突発的な事象があり、この期間の指数値には少なからず、これらスポット的事象の影響を受けているものと考えられます。このところの動きには、この点を割り引いてみる必要があるものと思われます。
このような状況を踏まえ、今年9月の全産業活動は、「緩やかな持ち直しの動きにあるが、このところ足踏みがみられる」に半歩ほど下方修正すべきかと思います。
- 全産業活動指数 結果概要
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/zenkatu/html/b2010_201809j.html
- 就活でもない、終活でもない「全活」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/zenkatsu_line.pdf
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