中国向け出荷の減少は、日本国内の生産活動にどれほどの影響をもたらしたか?;2015年産業連関表を用いて試算してみました 2019年9月5日
2019年に入り、国内鉱工業の生産活動は低下
鉱工業生産・出荷は2018年までは上昇基調で推移していましたが、2019年に入り低下して以降、一進一退の動きをしています。2019年上半期の鉱工業生産の水準は前年同期比でマイナス2.0%低下しています。
こうした生産水準の低下については、中国向けを始めとする輸出の減少と国内向け出荷の減少の両方が寄与していますが、国内向け出荷の減少には、中国向けの財の生産に関連した部品・原材料の供給や設備投資が抑制された影響が含まれている可能性も考えられます。そこで、中国向け出荷の減少が一体どの程度国内生産活動を押し下げているかについて、本年6月に公表された2015年産業連関表を用いて、中国向けの出荷減少による国内向け出荷への波及効果を含め、国内生産活動への影響について試算してみました。

本年上期の中国向け出荷は、幅広い業種で低下
実際、中国向け出荷は、2018年11月から2019年1月にかけて大きく低下し、その後も前年の水準を下回って推移しています。2019年上半期の中国向け出荷は前年同期比でマイナス9.8%低下しており、出荷全体の押し下げ要因となっています。
業種別に見ると、デジタルカメラ等の民生用機器や通信機器等からなる情報通信機械工業を始め、中国向け出荷のうち最大の4分の1強を占める電子部品・デバイス工業(携帯電話やパソコン等に用いられる半導体集積回路等の品目からなる)などで10%以上の低下となっており、幅広い業種で低下しています。

本年上期の鉱工業生産の低下は、半分が中国向け出荷減少の影響による寄与との試算結果
こうした各業種の中国向けの出荷変動が国内生産活動に及ぼす影響について、産業連関表を用いて試算してみました。
鉱工業全体では2019年上半期の生産は前年同期比でマイナス2.0%低下していますが、そのうち中国向け出荷の減少による直接的な寄与度はマイナス0.6%ポイントとなっています。これに加え、中国向け出荷の減少による国内生産への波及分といった間接的な寄与度はマイナス0.4%ポイントであり、直接的、間接的影響を合わせるとマイナス1.0%ポイントと、鉱工業全体の生産低下分の半分が中国向け出荷減少による寄与であることがわかります。さらに、鉱工業以外の産業の生産活動についても波及効果分で、マイナス0.1%ポイントの押し下げ効果がありました。
業種別に見ると、例えば電子部品・デバイス工業の生産は前年同期比でマイナス9.2%の低下でしたが、このうち中国向け出荷の減少による影響は、他産業からの波及効果を含めるとマイナス5.4%ポイントの寄与という結果となり、かなり影響があったことがわかります。中国向け出荷低下の直接的影響については、情報通信機械工業や生産用機械工業など設備投資に関わる資本財を多く含む業種でも大きくなっていますが、電子部品・デバイス工業や鉄鋼業、非鉄金属工業のような部品や素材となる生産財関連の業種では、他の業種の需要変動による影響を受けるため、間接的な影響による波及効果が大きくなる傾向があります。

中国向け出荷の減少による国内生産活動への影響は、このように波及効果も含めるとかなりの影響を受けていると見ることもできます。
なお、こうした波及効果による影響以外にも、中国経済が減速すると、中国に輸出を行っているアジア諸国等他国の経済にも影響が及び、日本から中国以外の他国への輸出も減少するなど、他の波及効果が生じることも考えられます。こうした影響も考慮すると、中国経済減速による出荷減の影響はさらに増すことも考えられます。
いずれにしても、日本からの中国向け出荷の多くは製造工程で用いられる生産財や資本財であり、世界の生産工場としての中国の位置付けを考慮すると、中国向け出荷の回復には、中国経済の回復とともに、中国からの輸出に影響する世界経済の回復等も重要と考えられ、今後の海外経済や通商問題の動向も注意してみていく必要があります。
今回ご紹介しきれなかった中国向け出荷と中国現地法人売上高の関係や、中国向け出荷におけるウエイトの大きい電子部品・デバイス工業の動向などについても、下記リンク先のスライド資料に掲載しておりますので、是非お目通しください。
- ミニ経済分析「中国向け出荷減少による国内⽣産活動への波及効果;2015年産業連関表による試算」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20190905minikeizai.html
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