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経済解析室ひと言解説集
- 第3次産業活動指数における「人手型サービス」と「設備型サービス」『その2』
第3次産業活動指数における「人手型サービス」と「設備型サービス」『その2』
前回のひと言解説では、第3次産業活動指数における「人手型サービス」指数と「設備型サービス」指数について、両者の推移を比較しながら紹介し、人手型サービスの方が、設備型サービスに比べて変動が激しいという話をしました(第3次産業活動指数における「人手型サービス」と「設備型サービス」『その1』)。
今回は、両者を比較した時のもう一つの特徴である、設備型サービスが2012年後半にはリーマン・ショック以前の水準を回復しているのに対して、人手型サービスは、いまだにリーマン・ショック以前の水準を回復していない点について、掘り下げてみたいと思います。
以下では、人手型サービスと設備型サービス別に、2015年指数のリーマン・ショック前(2008年指数)対比の伸び率の業種別寄与度を見ることで、リーマン・ショック以降に伸びている業種、伸び悩んでいる業種を明らかにしました。
下左図は、設備型サービスの業種別の内訳寄与度を示したものです。2015年の2008年対比は、+2.2%でした。業種別の内訳を見ると、上昇に寄与しているのが、通信業、貸事務所業等で、下落に寄与しているのが、物品賃貸業、電気・ガス・熱供給・水道業等です。全体をプラスにけん引したのは、通信業の大幅な伸びだと言えるでしょう。これは、携帯電話事業が、足下ではかつての勢いを失いつつも、過去7年間、継続した伸びを見せたことによるものです。
次に、上右図で、いまだリーマン・ショック前の水準を回復していない、人手型サービスについて見てみましょう。2015年の2008年対比は、-1.2%でした。業種別の内訳を見ると、上昇に寄与しているのが、医療,福祉、金融,保険業等で、下落に寄与しているのが、卸売業、事業者向け関連サービス等です。全体をマイナスにけん引したのは、卸売業の大幅な下落だと言えるでしょう。
卸売業について、更に内訳を見ると、医薬品・化粧品等卸売業はプラスに寄与しているなど(+0.3%ポイント)、同じ卸売業でも、業種によっては好調な先もあります。しかし、機械器具卸売業(-1.6%ポイント)、建築材料,鉱物・金属材料等卸売業(-1.4%ポイント)を中心に、飲食料品卸売業(-0.4%ポイント)や繊維・衣服等卸売業(-0.4%ポイント)等、幅広く下落していました。
機械器具卸売業は、自動車、電気機器、精密機器らの販売額等の影響を受けると考えられ、建築材料,鉱物・金属材料等卸売業は、材料価格の影響等を受けると考えられます。また、飲食料品卸売業や繊維・衣服等卸売業は、流通における構造変化を示しているかもしれません。なお、卸売業=問屋の活動量が低下している要因としては、「問屋中抜き論」がよく言われますが、卸売業の半分以上はB to B、つまり産業使用者向けの卸売業で、この産業使用者向けの卸売業には、「問屋中抜き論」は当てはまりません。このように、卸売業とひと括りに語るのは難しいこともあり、卸売業で何が起きているのかについては、更なる検証が必要なようです。
(※第3次産業活動指数では、再編集系列として卸売業を「産業使用者向け卸売業」と「小売業向け卸売業」の2つに分割して、それぞれ指数を作成していますので、御関心の向きは是非御利用ください。)