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お役立ちミニ経済解説(by.経済解析室)
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経済解析室ひと言解説集
- 平成26年は三重県、平成27年は東京都が、全国鉱工業生産変動の「主役」;全国生産への地域別寄与等、の地域別生産活動把握のための試み
平成26年は三重県、平成27年は東京都が、全国鉱工業生産変動の「主役」;全国生産への地域別寄与等、の地域別生産活動把握のための試み
経済解析室では、全国の鉱工業指数を作成していますが、経済産業局、都府県でもそれぞれの管轄区域の鉱工業生産指数を作成しています。しかし、各地域別指数を合算する基準(ウェイト)がないため、全国の生産に対し特定の都道府県がどのような寄与となっているか、あるいは任意の都道府県からなる「経済圏」の生産指数はどうなっているか、といったことは分かりませんでした。
そこで、今回は、経済産業省生産動態統計調査の都道府県別品目集計データを用いて、全国の鉱工業生産指数のウェイトを都道府県に分割するというアプローチで、この問題に対応できないか、試算することにしました。
愛知県のウェイトが突出
この方法で、都道府県別のウェイトを計算すると、愛知県のウェイトが一番高く、次いで神奈川県、静岡県、東京都と続くことになることが分かりました。また、愛知県のウェイトが2位の神奈川県の倍ということで、47都道府県の中で突出しています。
平成26年は三重県、平成27年は東京都の影響が大
このウェイトと各都道府県が公表している鉱工業生産指数を用いることで、全国の鉱工業生産に対する変動寄与などを計算できることになります。ただし、都道府県によって、採用品目に差があったり、品目のウェイトが異なったりしているため、各都道府県生産指数を加重平均したものと全国指数とは、完全には一致しません。基準年から離れると、両指数間のかい離が出てきているようです。一方、指数水準のかい離に比べ、前年同期比ではそれ程の違いはないようです。
さて、全国指数の年単位の動きをみると、平成26年は前年比2.1%上昇でした。この生産上昇に対する寄与を都道府県別でみると、実は三重県が最も大きくなっており、0.4%ポイントを説明します。平成26年の三重県鉱工業生産は前年比8.9%と大きく上昇しており、電子部品・デバイス工業の生産が拡大していました。
また、平成27年の全国指数は、前年比マイナス1.2%低下でしたが、この生産低下に対して最も大きな低下寄与をみせたのが東京都で、マイナス0.2%ポイントを説明します。平成27年の東京都鉱工業生産は前年比マイナス4.8%低下で、情報通信機械工業の生産が大きく低下していました。
東京都はウェイト順位4位ですので、全国指数への影響が大きいことは分かりますが、ウェイト順位7位の三重県の鉱工業生産が平成26年の生産のけん引役だったということは、三重県の電子部品・デバイス工業が、全国指数を動かす程の勢いだったいうことになります。
南北の関東指数や東海4県指数を計算
この県別ウェイトを用いると、経済産業局が公表している地域割りとは異なる鉱工業指数を試作することもできます。
例えば、関東地方を南関東3都県(東京、埼玉、神奈川)と北関東3県(茨城、栃木、群馬)に分けた生産指数を計算してみました。北関東の鉱工業生産は、平成27年6月以降低下するものの、それでも100を下回らず、勢いがあることが分かります。他方、南関東の鉱工業生産は、平成26年3月を最後に以降は100を下回る推移となっています。ここ数年の関東地方の鉱工業生産は、さしずめ「北高南低型」ということになります。
同じように、中部地方について、東海4県(静岡、岐阜、愛知、三重)と北陸3県(富山、石川、福井)で比較することもできます。なお、北陸3県指数は、既に公表値が存在しますが、今回の計算方法で計算した指数を利用します。輸送機械の集積地である東海地方が横ばいとなっている一方で、北陸地方は生産活動が旺盛ということになります。
このように、都道府県別のウェイトを使用することにより、従来は確認することが困難であった全国の動向に対する都道府県の寄与や、都道府県を統合した経済圏の生産動向を確認することができたるようになります。
しかし、この方法には、いくつか課題があります。一つは、データの制約により、食料品・たばこ工業など一部の全国ウェイトを都道府県に配分できない点です。また、計算に使用した各都道府県指数においては、作成段階での品目配分ウェイトが全国ウェイトと違うことも課題です。したがって、異なるウェイトの算定方法の研究もしていきたいと思っています。