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新型コロナウイルス感染症による家計消費の変化と日本経済へのインパクト
本年に入り、世界的大流行となった新型コロナウイルス感染症ですが、日本でも国民一人一人の行動・生活のあり方に大きな影響を及ぼし、家計の消費にも大きな変化が生じています。今回は、この家計消費の変化とそれによる日本経済へのインパクトについてみてみたいと思います。
家計消費支出は本年3月、4月と大幅続落
家計調査(総務省)で日本の家計消費支出の直近の動きをみると、2019年9月までは上昇傾向にありました。同年10月以降、消費税率引上げによる駆け込み需要の反動減や、大型台風等の影響もあり落ち込んだものの、前者の影響は前回2014年の消費税率引上げ時ほどではなく、これらの影響も徐々に和らぎ、本年2月頃までは持ち直す動きも見られていました。
しかし、2月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の影響は拡大し、家計消費支出は本年3月、4月と大幅続落しました。5月も微減となりましたが、6月以降は持ち直しに転じています。
感染症の影響により、家計消費の内訳も大きく変化
感染症拡大の影響が大きかった3月、4月、5月の消費支出の低下を品目別に見ると、「被服及び履物」、「教養娯楽」、「教育」が特に落ち込んでいることがわかります。感染症の影響で外出や移動が控えられたことで、衣類や娯楽サービス(旅行、宿泊等)への支出が大きく減少するとともに、学校休校の影響もあり、塾、予備校などの月謝や修学旅行の積み立てなどの支出も大きく減少したと考えられます。なお、「教育」の低下には、感染拡大の影響のほか、2019年10月から幼児教育が無償化された影響も含まれています。
また、通常あまり変動しない固定費である「交通・通信」も4月以降、大きく落ち込んでいます。感染症の影響が拡大したことで、通勤・通学や移動を伴う買い物、旅行等が控えられ、交通費への支出が減少したことが大きく影響し、その影響は6月以降も続いたことがわかります。
一方、「家具・家事用品」は多少ながら前年同月比で増加しています。感染症の影響により自宅で過ごすことが多くなった一方、外食の機会も減少したことなどから、生活家電等の「家具・家事用品」の消費が増加しました。6月以降も、「家具・家事用品」の消費は増加が続いています。
5月に緊急事態宣言が解除された後、家計消費支出は回復傾向にあるものの、人々は外出や人との接触機会増加に関わる消費を控え、自宅での生活を充実させる消費へと支出先をシフトさせている様子がみられます。
ただ、9月には、イベントの開催制限緩和やGO TO トラベル事業の全国への対象拡大等が決定されており、これらに対応して家計消費支出がどう変わったかについても注目されます。
家計消費の変化が国内生産にもたらした影響
上記のように、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、本年3月、4月、5月の家計消費支出の水準は大幅に低下しましたが、この家計消費の変化が国内産業の生産活動に与えた影響について、2016年延長産業連関表を用いて試算してみました。
本年3月、4月、5月の家計消費の落ち込みは、この3か月間の合計で国内産業の年間の生産を前年比でマイナス2.4%押し下げる結果となりました。産業別に見ると、外食、旅行商品などの「対個人サービス」が同マイナス8.2%、交通費などの「運輸・郵便」が同マイナス7.1%、衣服などの「繊維製品」が同マイナス6.3%の減少となりました。
一方、この間の家計消費支出の変化は、下図のようにほとんどの産業の生産を低下させる中で、パソコン、ゲーム機などの「情報通信機器」は前年比で2.8%の増加となりました。
新型コロナウイルス感染症が拡大したこの間、人々は外出を減らし自宅で過ごす時間を増やすとともに、衛生にも非常に気を配るなど、人々の行動・生活様式は大きく変わりましたが、ほとんどの産業の生産活動には総じてマイナスの影響が生じたと考えられます。
参考までに、この間の家計消費支出による付加価値誘発額を試算してみると、付加価値誘発額は前年比でマイナス2.3%となり、2019年の名目GDP約554兆円(二次速報値:内閣府)に対し、約13兆円のマイナスとなりました。
なお、上でも述べたように、感染症により人々の行動・生活様式が変わった結果、本年6月以降、家計消費支出の水準は戻りつつも、その内訳は変わっています。こうした消費の構造変化も日本の経済と各産業に影響を及ぼすことが考えられますが、これについては別の機会に改めて分析したいと考えます。
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