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訪日外国人の消費は、日本のサービスビジネスにとって、どれ程重要か?;その伸びと国内の対個人サービスへの影響度合いを確認

今年の10月末日。1月からの累計訪日外国人数が初めて2,000万人を突破!とは言われつつも、訪日外国人による「爆買い」は終息したとも言われるなど、昨今の話題に事欠かないのが、「訪日外国人による日本国内での消費行動の移り変わり」です。

そこで今回は、「訪日外国人消費指数」というものを試算してみました。これは、「訪日外国人消費動向調査」(観光庁)の訪日客1人当たりの費目別売上高に、「訪日外客数」(日本政府観光局)を乗じて旅行消費金額を算出し、消費者物価指数を用いて実質指数化したものです。



今年、平成28年第3四半期の訪日外国人消費指数は、基準年である平成22年の3倍を超える指数値317.2となっており、急拡大しています。第3次産業活動指数の広義対個人サービス(原指数)も同時期に105.4というレベルではありますが、訪日外国人消費指数の伸びとは比較になりません。

また、特徴的な動きとしては、23年第2四半期の落ち込みと、26年第4四半期からの拡大があげられます。前者の落ち込みは東日本大震災の影響が、また、後者の拡大は消費税免税制度の拡充や東南アジア諸国に対するビザ要件の緩和などの影響がそれぞれ現れているものと思われます。

では、訪日外国人消費の何が伸びているのか、訪日外国人消費指数の内訳費目別の影響度合い(全体の前年同期比に対する寄与度)を見てみましょう。



まず、訪日外国人消費全体の前年比上昇幅に注目すると、東日本大震災直後の大幅低下からの反動上昇である24年第2四半期を除けば、27年第3四半期の前年同期比68.3%上昇がピークです。その後、さすがに上昇幅は縮小傾向となっており、足下28年第3四半期ではかろうじてプラスを維持しているという状況です。

内訳費目に注目してみると、寄与が大きいのは、概ね飲食費、宿泊料金、次いで買物代となっています。特に、買物代は26年後半から27年にかけて大きくプラスに寄与していましたが、その後は縮小傾向にあり、28年第2四半期以降は前年同期比でマイナスに転じている状況です。これが、いわゆる「爆買い」はピークを越えたということの現れです。

他方、飲食費の前年同期比寄与の大きさが、他の費目に比べ、安定していることにも目が行きます。「爆買い」ということで、訪日外国人消費の小売業への影響が話題になりますが、実は外食産業における訪日外国人の消費というのも重要だったのかもしれません。

では、第3次産業活動指数、あるいは個人向けサービスの動向に対し、訪日外国人消費はどのように影響しているのでしょうか。そのためには、訪日外国人の消費支出額の、対応する産業の売上高に対する比率を見る必要があります。そこで、「経済センサス-活動調査」(総務省・経済産業省)の産業別売上高に対する費目別訪日外国人旅行消費金額の割合を算出し、その割合に基づいて、第3次産業活動指数の個人向けサービス指数の前年同期比に対する影響度合いを算出してみました。

すると、指数の基準年である2010年でみると、訪日外国人消費指数の第3次産業活動指数に対する割合は、0.2%程(1万分比のウェイトで18.2)でした。さらに、28年第3四半期の指数値から、対個人サービス指数に対する訪日外国人消費指数の割合を計算すると1.1%となりますので、国内のサービスビジネス全体の動きに及ぼす影響は、まだまだ限定的だと言わざるを得ません。



とはいえ、訪日外国人消費指数は、24年以降一貫して前年同期比でプラス寄与であり、26年の第2四半期から翌年第1四半期まで対個人サービスの前年同期比がマイナスとなった時期もプラス寄与で推移してくれました。その寄与度合いを見ても、27年第3四半期の訪日外国人消費指数のプラス寄与が最も大きくなりましたが、それでも対個人サービスの前年同期比1.2%上昇に対し、訪日外国人消費指数の寄与度は、0.46%ポイントと、全体の伸びの3分の1以上は、訪日外国人の消費によるものでした。今年の第2、第3四半期の対個人サービスが、前年同期比マイナスですので、国内の個人向けサービスの「伸び」という意味で、プラス寄与を見せてくれる訪日外国人の支出は貴重です。

東京オリンピックが開催される2020年の訪日外国人旅行者数の目標は4,000万人とされていますが、日本の対個人サービスに対する需要の「伸び代」として、そのウェイトも踏まえつつ、今後も訪日外国人旅行者の動向に注目していきたいと思います。

(補足資料)訪日外国人消費指数の作成方法


最終更新日:2016年12月9日
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