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経済解析室ひと言解説集
- 30年前とほぼ同水準の国内生産を維持するエアコンは、国産シェアが実に8割以上を占めています
30年前とほぼ同水準の国内生産を維持するエアコンは、国産シェアが実に8割以上を占めています
連日、厳しい猛暑が続いています。そのせいか、目下実験が進んでいる家電大型量販店のPOSデータの統計指標化の結果グラフにおいても、今年6月後半からエアコンを含む生活家電の販売額が急上昇しています。(生活家電の販売額のグラフが確認できます。https://bigdata-statistics.meti.go.jp/ja/idea/00001/)
そういう状況ということもあり、国内メーカー各社も生産を増やしているというニュースを目にしたか方もいらっしゃるかと思いますが、実はエアコンは、海外生産のイメージが強い白物家電の中では異色の存在で、圧倒的に国産が多い製品であるということを御存じでしたでしょうか?
エアコンの国内生産は、30年前とほぼ同水準
下の図は、鉱工業指数の品目別長期データ※を用いて、この30年間の白物家電の国内生産の動向を、1990年の水準を100とした指数でみてみたものになります。
これをみると、セパレート形エアコン、電気がま(炊飯ジャー)以外の家電は、2016年現在で1990年の半分以下の生産水準となっているのが分かります。
一方、セパレート形エアコンについては2016年現在で約9割となっており、30年前の生産水準をほぼ維持しているのが分かります。また、生産指数が近年、明瞭に回復してきているのも、他の品目とは違うところです。
※平成2年基準、平成7年基準、平成12年基準、平成17年基準、平成22年基準の5回分の基準指数を用いて、1995、2000、2005、2010年の各時点の指数について、新旧基準データから新旧基準を接続するための係数を作成し、1990年=100とする長期データを作成。

エアコンの国産品シェアは8割以上
次に、最新の延長産業連関表(2014年時点)を用いて日本に供給されている白物家電の国産品シェアをみたものが下図になります。これをみると、エアコンを除く民生用電気機器の国産品シェアが65.2%であるのに対して、エアコンの国産品シェアは実に83.8%となっています。

グローバルでみると、使われているエアコンの種類に地域差あり
では、なぜ白物家電の中でエアコンは、国産率が高いのでしょうか?
そのヒントは世界各地域で使われているエアコンの製品事情にあるものと考えられます。下図は、(一社)日本冷凍空調工業会が公開している、世界各地域のインバーターエアコンの普及率を示したものですが、日本や北米、豪州ではインバーターエアコンの普及率が100%である一方、海外生産拠点のイメージが強い中国や東南アジアでは普及率がそれほど高くありません。
こうした地域性があまり見られないデジタル家電と異なり、地域によって求められる製品スペックが異なるエアコンは、地産地消の観点から、海外で大量生産して日本に運ぶよりも、日本国内で生産する方が「割に合っている」ということかもしれません。

このように、身近なエアコンという製品について、国産と輸入という観点からみるだけでも、意外な事実が見えてくることがお分かりいただけましたでしょうか。皆さんのご家庭のエアコンの製品情報をみてみると、きっと「日本製」の表示が目に入ってくるかもしれません。