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経済解析室ひと言解説集
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企業の「アニマルスピリッツ」の見える化に挑戦しました
皆さんは「アニマルスピリッツ」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。ビジネス書などでは企業家精神などとして紹介されているこの言葉は、経済学者ケインズが使用した言葉で、不確実な状況下を切り抜ける企業の経済活動の原動力になるものとして注目されています。
今回は、このアニマルスピリッツの意味をもう少し広く解釈し、「不確実な状況下において企業が抱く予想」と定義し直した上で、経済解析室で行っている製造工業生産予測調査の個票データを用いて、企業の生産意欲を指標化(DI)することで、アニマルスピリッツの見える化に挑戦しました。
具体的には、企業が前月時点の生産計画から今月の生産計画を引き上げた場合を「強気」としてカウントし、逆に引き下げた場合を「弱気」としてカウントして、「強気」の割合から「弱気」の割合を差し引いたDIを「アニマルスピリッツ指標」と呼ぶこととしました。
このアニマルスピリッツ指標の動きを見てみると、強気が優勢な局面(DIが0より大きい)と弱気が優勢な局面(DIが0より小さい)が交互にやって来ており、循環的な動きをしているのが分かります。また、景気循環と重ね合わせて見ると、ノイズを除去したDIが-5を下回ると景気後退局面にある可能性が高いということも分かりました。
多くの月において、5割程度の企業は生産計画を変更しないので、27.5%の企業が生産計画を下方修正していると、景気後退局面入りを示唆するということになります。
因果関係は双方向が想定できますが、景気の状態と企業のアニマルスピリットの微妙な変化が連動しているようです。
さて、強気と弱気の企業の割合の推移を見たものが下図になりますが、これを見ると、強気は安定的に一定層存在する一方、弱気については、強気よりも変動が大きく、強気以上に弱気がDIの動向を大きく左右していることが分かりました。
かつてケインズは、アニマルスピリッツについて、楽観的な衝動が経済活動を活発化させると指摘しました。一方、上に見たアニマルスピリッツ指標からは、特に景気後退懸念がある時、強気を喚起することよりも、むしろ弱気の増加をいかに止めるか、それも生産計画下方修正企業の割合が4分の1をなるべく上回らないようにすることがポイントになると言えるかと思います。
※ノイズを除去したDIには、DIからX12-ARIMA(デフォルト)を用いて趨勢循環変動成分を抽出したものを使用。
より詳細な資料については、こちらを御覧ください。
「企業の「アニマルスピリッツ」を計測する」(2016/10/26ミニ経済分析)
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20161026minikeizai.html