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輸入規制で注目される鉄鋼の米国向け出荷。日本からの輸出はどのくらい?
鉄鋼業の出荷額は15.7兆円、うち約2割が輸出(2016年)
今年3月、米トランプ政権が鉄鋼などの輸入制限(関税率引上げ)を決定し、日本国内でも大きなニュースとなりました。そこで、日本の鉄鋼業の出荷や輸出に関する基礎データを改めて確認してみたいと思います。
まず我が国の鉄鋼業全体について、工業統計(経済産業省)によると鉄鋼全体の製造品出荷額等は、直近データでは15兆6,570億円(2016年)です。製造業全体で約300兆円ですので、鉄鋼はそのうちの約5%ということになります。
また、貿易統計(財務省)によると鉄鋼の輸出額は2兆8,430億円(2016年)ですので、鉄鋼業の出荷に占める輸出の割合は、金額ベースで約18%です。残りの約8割は日本国内向けということになります。
米国向けは鉄鋼輸出の5%
次に、経済解析室で作成している鉱工業出荷内訳表を用いて、2017年の数量ベースの鉄鋼の輸出先構成比を見てみます。
下左の円グラフは、鉄鋼業の出荷内訳の割合を算出したもので、数量ベースでも2割が輸出向けでした。
輸出向けについて、さらにその仕向け先の構成比を示したものが右の円グラフです。多くはアジア諸国向けで、ASEAN、中国、韓国、台湾の合計で7割を占めており、米国向けの割合は5.1%ほどでした。鉄鋼は重いため輸送コストを考えると近隣諸国向けが大半ということも頷けます。

特殊鋼が多い米国向け輸出
「鉄鋼」といっても、その種類は多く、様々なものがあります。今度は、出荷全体、輸出全体、米国向け、アジア向け(ASEAN+中国+韓国+台湾向け)に分けて種類別構成比を見てみます。米国向けの構成比に特徴はあるのでしょうか。
二つ並んだ円グラフの上側が種類別、下側は、普通鋼と特殊鋼(鋼材に特別な性能を持たせるために、クロムやニッケルなどの材料を特殊配合したもの)に分類した構成比です。
種類別の構成比を比較しても、米国向けに顕著な特徴はありませんが、他方、米国向け輸出では、普通鋼よりも特殊鋼が多いという目立った特徴があります。2017年の米国向け輸出で割合が大きかった品目は、特殊鋼熱間圧延鋼材(32%)、鋼半製品(16%)、特殊鋼熱間鋼管(10%)でした。鉄鋼の米国向け輸出では、自動車メーカーなどの機械産業の需要家のオーダーに合わせて調整された特殊な鋼材が多いようです。
<参考>
・特殊鋼熱間圧延鋼材:合金鋼の希少金属を特別多く含有する鋼を用途別に圧延成形した鋼材。自動車用、産業機械用、建設用など。
・鋼半製品:鋼塊を分塊圧延機、鍛造機にかけて、次工程製品の加工をしやすくした中間生産品及び連続鋳造設備により鋳造した中間生産品。特殊鋼・普通鋼どちらも含む。
・特殊鋼熱間鋼管:産業機械、建設、自動車の特殊配管用など。

アメリカの業界団体の整理したデータでは、今年の上期の米国の国内出荷量は、前年同期に比較して4.1%増加している一方、輸入量は前年同期比マイナス9.3%減少しているそうです。輸入元の国別で見ると、トルコ(前年同期比マイナス56.0%)やブラジル(前年同期比マイナス23.5%)からの輸入が大きく低下しており、日本からの輸入も前年同期比マイナス14.3%の減少だそうです。ちなみに、中国からの鉄鋼の輸入はシェア2%程度で、減少度合いも小さくなっています。
いずれにせよ、米国の貿易政策に関連する基礎的データの確認は、引き続き継続していくことが必要なようです。
<参考資料>
問合せ先
経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室
電話: 03-3501-1511(代表)(内線2851)、03-3501-1644(直通)
FAX : 03-3501-7775
E-MAIL : bzl-qqcebc■meti.go.jp (■を@に置き換えてください)