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経済ショックは鉱工業生産にどのように影響したのか;日米比較から見るその影響

今年初めに世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症は、消費活動や生産活動を大幅に低下させるなど、日本を始め、世界各国の経済に多大な影響を及ぼしました。そして、その影響は現在も続いています。

今回の感染症拡大は、世界的な経済ショックを引き起こしましたが、過去、世界的な経済ショックとして記憶される事象としては、2008年に発生したリーマンショックがあげられます。

今回、リーマンショック時と今回の感染症拡大時で、日本とアメリカの鉱工業生産がどのように推移したかを比較することで、日米の産業活動の違いなどをみていきます。

今回の感染症拡大では、リーマンショック時よりも生産の回復は速い

日本とアメリカの鉱工業生産は、リーマンショック時、今回の感染症拡大時、ともに大きく落ち込みましたが、落ち込みの速度や回復の状況には、日本とアメリカで違いが見られました。この違いを、鉱工業生産指数の動向からみてみます(注)。

アメリカでは、リーマンショック発生後(2008年9月以降)、9か月に渡り、鉱工業生産が約10%低下しましたが、リーマンショック以前の低下傾向と比べても、低下の速度はさほど変わりませんでした。それに対し、今回の感染症拡大では、感染症拡大前と比べると急落し、3か月で鉱工業生産が約20%低下と、リーマンショック以上の急激な生産低下となりました。

日本の場合は、リーマンショック、今回の感染症拡大のどちらにおいても、生産は大きな落ち込みを見せました。ただし、日本、アメリカともに回復速度は、今回の方がリーマンショックの時と比べ、速くなっています。

また、今回の感染症拡大では、生産回復は、アメリカの方が1か月早く始まり、その速度も当初は日本を多少上回っていました。ただし直近では、9月のアメリカの鉱工業生産は前月比マイナス0.6%低下に転じ、アメリカの生産の回復は頭打ちになってきている様子もみられます。

(注)日本の鉱工業生産指数は、リーマンショック時は2010年基準、今回の感染症拡大時は2015年基準と、基準年の異なるデータを用いているため、両時点の減少幅は本来同等には比較できない。影響の大きさの違いの程度を見る上での参考として参照のこと

今回、日本の方が生産は20%超と大きく落ち込んだとはいえ、アメリカでも生産は20%弱と日本に近い落ち込みをみせましたが、リーマンショック時は、アメリカと比べ、日本の生産がはるかに大きく落ち込みました。その要因としては、①前回は日本の輸出依存度が相対的に高く、世界経済の悪化が輸出に大きく影響したこと、②今回は、日本の輸出依存度は依然高いものの、アメリカでも感染防止のためにロックダウン(都市封鎖)といった強力な措置が講じられたことで、今回はアメリカでも国内向けを含めた生産の低下が大きかったことが考えられます。

日本の生産回復は自動車工業がけん引するも、アメリカより回復に遅れ

今回の感染症拡大の影響による生産活動の低下を、業種に分けて影響を見てみましょう。日本・アメリカともに、自動車工業の落ち込みが生産活動の低下に大きく影響し、その後の回復についても、自動車工業の伸びがけん引していますが、日本の方が、鉱工業生産全体の上昇・低下に占める自動車工業の寄与度の割合(寄与率)が大きいのに対し、アメリカの自動車工業の寄与率は日本ほどではありません。アメリカの方が、自動車工業以外の産業もより幅広く生産に影響を受けたとみられます。

また、自動車工業の生産は、アメリカでは既に感染症の拡大前の水準まで回復していますが、日本は、まだそこまでの回復とはなっていません。日本の鉱工業の中でも、自動車工業の生産はいち早い回復をみせていますが、日本の自動車工業がもたらす生産全体への波及効果も考えると、さらなる内需・外需の回復が期待されるところです。

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最終更新日:2020年10月23日
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