飲食関連産業の動向(FBI 2019年、2020年上期);2019年は3年連続上昇ながら、足下の四半期では3期連続低下。2020年上期は特に「飲食店,飲食サービス業」が急落したフード・ビジネス 2020年9月3日
- 2019年のFBIは3年連続の上昇。けん引役は食料品工業
- 2019年第4四半期以降、低下が続いたFBI。特に「飲食店,飲食サービス業」に感染症の影響が大きく、2020年上期は急落
- ほとんどの系列が最低水準を更新した2020年第2四半期の「飲食店,飲食サービス業」
- 2020年上期のFBIを特に引き下げたのは「食堂,レストラン,専門店」、「パブレストラン,居酒屋」
フード・ビジネス・インデックス(FBI)とは、生活に身近な飲食料品に関連する「食料品工業」、「食料品流通業」、「飲食店,飲食サービス業」の活動状況を表す経済指標です。
今回は2019年と2020年上期のFBIの動きをグラフ化してご紹介しています。
なお、元データである鉱工業指数(経済産業省)と第3次産業活動指数(経済産業省)が2015年基準となったことを受け、FBIも本公表分より2015年基準に改定しています。そのため、過去分のデータや一部系列名が以前の公表値(2010年基準)と異なりますのでご注意ください。

2019年のFBIは3年連続の上昇。けん引役は食料品工業
2019年のFBIは、指数値101.2、前年比0.2%と3年連続の上昇となりました。
FBIを構成する3業態のうち、食料品工業は前年比1.9%と6年連続の上昇、食料品流通業は同マイナス0.6%と3年ぶりの低下、「飲食店,飲食サービス業」は同横ばいとなりました。

FBIの前年比0.2%の上昇に対する3業態の影響度合い(寄与度)を見ると、食料品工業が0.5%ポイントの上昇寄与、対して食料品流通業がマイナス0.3%ポイントの低下寄与でした。2019年のFBIの上昇は食料品工業がけん引したことが分かります。

2019年第4四半期以降、低下が続いたFBI。特に「飲食店,飲食サービス業」に感染症の影響が大きく、2020年上期は急落
四半期毎のFBIの動きを見てみると、2019年第2四半期に3期ぶりの低下、続く第3四半期の上昇で低下分を取り戻したものの、第4四半期は前期比マイナス2.3%、指数値99.7と大きく低下、この時点で2016年第4四半期(99.5)以来の低水準となりました。しかし、2020年に入りさらに低下が続き、第2四半期には前期比マイナス12.8%と急落し、指数値は今基準(2015年基準)で最低の86.2となりました。

内訳3業態の動きを見てみると、2019年は、食料品工業は第1四半期に大きく上昇したのち、上昇と低下を繰り返し、食料品流通業は第1、第4四半期に低下、「飲食店,飲食サービス業」は第3四半期に4期ぶりの低下、第4四半期も連続低下となりました。第3四半期までは食料品工業の上昇・低下の影響が大きかったようですが、第4四半期は3業態とも低下となり、中でも食料品流通業の影響が大きかったようです。
なお、2019年第4四半期は消費税率引上げもありましたが、FBIは、同年第3四半期に前期比0.5%の上昇となった後、同年第4四半期は、前期比マイナス2.3%の低下となりました。ただ、前回の消費税率引上げ前後のFBIの前期比は、2014年第1四半期に0.9%上昇の後、同年第2四半期にマイナス3.2%低下でしたので、昨年の消費税率引上げの駆け込み需要と反動減の影響は、前回ほどではありませんでした。今回は、酒類・外食を除く飲食料品に軽減税率が設けられた効果等もあると考えられます。
2020年に入り、第1四半期に食料品工業と食料品流通業は上昇したものの、「飲食店,飲食サービス業」が大幅に低下しました。続く第2四半期には3業態ともに低下しましたが、特に「飲食店,飲食サービス業」が指数値52.2にまで急落したことが、FBI全体の急落に大きく影響しました。2020年上期は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、消費者への不要不急の外出自粛要請や、イベント等の自粛要請、事業者への営業時間短縮要請等が行われたことが、特に「飲食店,飲食サービス業」の活動低下に大きく影響したと考えられます。


ほとんどの系列が最低水準を更新した2020年第2四半期の「飲食店,飲食サービス業」
2019年第3四半期から4期連続の低下、また2020年に入ってからは2四半期連続で急落となった「飲食店,飲食サービス業」について、内訳系列の動きを見ていきましょう。
2019年の内訳系列の指数推移を見てみると、低下傾向が続いている「パブレストラン,居酒屋」、右肩上がりで好調な飲食サービス業(持ち帰りや配達飲食サービス業)、年初は良かったものの、年後半に低迷した「食堂,レストラン,専門店」など、系列毎に動きが多様でしたが、2020年に入ってからは、低下の程度に差はあるものの、全ての系列が連続で低下となりました。これには先にも述べたように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による消費者の外出自粛や、事業者への営業時間短縮要請等が大きく影響したと考えられます。
基準時の2015年の水準と比べ、直近の2020年第2四半期では、飲食サービス業が約7割、「食堂,レストラン,専門店」が約5割、喫茶店が約4割、「パブレストラン,居酒屋」に至っては2割以下にまで落ち込みました。これらの系列は全て、指数を作成し始めた2003年(飲食サービス業は2013年)以降での最低水準となりました。このため、「飲食店,飲食サービス業」全体も2003年以降で最低水準(52.2)となりました。

2020年上期のFBIを特に引き下げたのは「食堂,レストラン,専門店」、「パブレストラン,居酒屋」
次に、内訳系列の影響度合いについて見てみると、「飲食店,飲食サービス業」が低下し始めた2019年第3四半期から2020年第2四半期まで、低下寄与が大きかったのは、「食堂,レストラン,専門店」、次いで「パブレストラン,居酒屋」でした。
2020年に入ってからの「食堂,レストラン,専門店」や「パブレストラン,居酒屋」の低下の影響は、第3次産業活動指数で最も新型コロナウイルス感染症の影響を受けた業種である「生活娯楽関連サービス」の対1月比伸び率(3月、4月、5月)に対する影響度でも1位と3位となっています(関連記事はこちら)。
しかし、月次指数の推移を見ると、飲食サービス業以外は4月を底に、飲食サービス業も5月を底に上昇に転じているため、「飲食店,飲食サービス業」も第3四半期は前期比上昇に転じることが期待されます。ただ、6月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大がみられることから、その影響に注意する必要があります。
2020年第2四半期のFBI総合の前期比伸び率マイナス12.8%に対して、マイナス11.2%ポイントとほとんどが「飲食店,飲食サービス業」であるので、「食堂,レストラン,専門店」や「パブレストラン,居酒屋」等の低下がFBI総合を引き下げたということになります。逆に、2020年下期のFBI総合の水準回復には、今後も当面、新型コロナウイルスの存在を前提とする「ウィズコロナ」の時期が続くと見込まれる中、これらがどれだけ活動水準を回復させていけるかがカギとなります。特に「パブレストラン,居酒屋」は営業時間短縮要請や外出自粛の影響を受けやすく、また新型コロナウイルス感染症の世界的流行以前から低下傾向にありましたので、業態転換なども課題として考えられます。

今回ご紹介しきれなかったFBIの各業態別の指数、その内訳の動きや影響度合い(寄与度)、また、フード・ビジネスの名目事業規模などについても、下記リンク先のスライド資料に掲載しておりますので、是非お目通しください。
- ミニ経済分析「飲食関連産業の動向(FBI 2019年、2020年上期);2019年は3年連続上昇ながら、足下の四半期では3期連続低下。2020年上期は特に「飲食店,飲食サービス業」が急落したフード・ビジネス」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20200903minikeizai.html
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