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- 過去最高水準となった2018年の訪日外国人消費。ただ、「アジア」と「欧米」の訪日者消費の動向には違いがみられた-訪日外国人消費地域別指数のご紹介
過去最高水準となった2018年の訪日外国人消費。ただ、「アジア」と「欧米」の訪日者消費の動向には違いがみられた-訪日外国人消費地域別指数のご紹介
- 振れの大きかったアジア指数、着実に上昇した欧米指数
- 寄与率は低下したものの、依然、訪日外国人消費全体の動向を左右するアジアの訪日者消費
- ほぼ全ての費目で上昇したアジア指数、飲食費・宿泊料金の好調が際立つ欧米指数
経済解析室で試作している「訪日外国人消費指数(TCI)」では、訪日外国人全体の動きを示す指数のほか、訪日者の出身地域別に集約したアジアと欧米の2つの地域別指数も作成することができます(注)。
2018年の訪日外国人全体の指数についてはこちらのミニ経済分析でご紹介したところですが、今回は、この地域別指数の動向についてご紹介します。
(注)地域別指数は、2010年以降国別指数の作成可能な以下の国のデータを基に、訪日外客数の地域分類を参考に作成。
アジア:韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インド
欧米:英国、ドイツ、フランス、ロシア、米国、カナダ
振れの大きかったアジア指数、着実に上昇した欧米指数
アジアと欧米、2つの地域別指数の動きを比較してみます。
2018年の訪日外国人全体の指数は、季調済指数値で382.5、前年比9.1%と7年連続の上昇でした。これを地域別にみると、アジアの指数値は448.7、前年比6.8%と7年連続の上昇、欧米の指数値は250.0、前期比16.1%と7年連続の上昇となりました。
訪日外国人全体の2018年の指数値は、年初以来第3四半期まで3期連続で低下していたものの、第4四半期の急回復により2017年の指数値を上回りましたが、第3四半期までの低下は、アジアからの訪日者消費の低迷によるものであったことがわかります。対照的に欧米からの訪日者消費については、2018年は比較的安定した上昇基調が続いていたことが読みとれます。

寄与率は低下したものの、依然、訪日外国人消費全体の動向を左右するアジアの訪日者消費
訪日外国人消費全体の前年比変動に対するアジア及び欧米の地域別の寄与をみてみます。
2018年の訪日外国人消費指数の前年比9.1%に対し、アジア指数は4.87%ポイントの上昇寄与、欧米指数は2.16%ポイントの上昇寄与となりました。アジア指数は2018年は上昇したものの、好調だった2017年と比べると上昇寄与は3分の1程度になりました。また全体指数への上昇寄与率も減少しています。一方の欧米指数は、2017年と比べ上昇寄与の程度は若干減にとどまっており、全体への上昇寄与率は増加しました。
なお、四半期ベースでみると、先にも述べましたが、2018年は第1四半期から第3四半期までの低下も、第4四半期の急回復も、ともにアジアからの訪日者の消費が大きく寄与したことが確認できます。アジア以外の地域からの訪日者消費の影響も増しつつあるとはいえ、訪日外国人消費全体は、アジアからの訪日者消費に大きく左右されたことがわかります。

ほぼ全ての費目で上昇したアジア指数、飲食費・宿泊料金の好調が際立つ欧米指数
アジアと欧米それぞれの指数変動に対する、費目別の寄与をみてみます。
アジア指数をみると、アジア全体の前年比6.8%に対し、上昇に大きく寄与した内訳費目をみてみると、飲食費が4.32 %ポイント、宿泊料金が2.83%ポイントと、この二つが特に大きく上昇に寄与しています。次いで、娯楽サービス費が1.83%ポイント、買物代が1.65%ポイントと続いています。低下に寄与したのは「その他」のみでした。
四半期ベースでは、2018年に入り、第1四半期から第3四半期まで多くの費目で低下がみられましたが、飲食費は自然災害の影響のあった昨年第3四半期以外は上昇が続いており、比較的安定的に上昇傾向にあることがみてとれます。

欧米指数をみると、欧米全体の前年比16.1%上昇に対し、飲食費が10.04%ポイントの上昇、宿泊料金が5.24%ポイントの上昇となっており、この二つの費目の上昇寄与がほとんどを占めていました。2018年は訪日外国人消費全体の上昇にも、飲食費と宿泊料金が特に寄与していましたが(参考)、欧米からの訪日者消費の影響もあったように見受けられます。
四半期ベースでみても、欧米指数の飲食費と宿泊料金は概ね上昇傾向で推移しています。欧米からの訪日者数は着実に増加していることもあり、欧米からの訪日者の飲食・宿泊関連消費も増加を続けているものと考えられます。一方、買物代は前年比で低下しており、娯楽サービス費の上昇寄与もわずかなものにとどまっています。飲食費・宿泊料金といった言わば滞在に必須の費用は増加しているものの、それら以外の費目では伸び悩みがみられます。
欧米からの訪日者は、アジアからの訪日者より、モノよりコト(経験)を求めて訪日している人も多いのかもしれませんが、飲食・宿泊関連以外にも消費を伸ばす工夫の余地はまだあるのかもしれません。

2018年のアジア及び欧米からの地域別消費指数の動向をみてみると、違いがみられました。訪日外国人消費全体の動向には、アジアの訪日者消費の影響が大きく表れ、四半期ベースでの大きな振れも、主にアジアの訪日者消費の振れによるものでした。一方、欧米の訪日者消費は着実に増加し、特に飲食・宿泊サービスにおいては、欧米からの訪日者は安定感のある客層となりつつある様子もみられました。ただ、欧米の訪日者消費に関しては、飲食・宿泊サービス以外の消費に伸び悩みもみられます。
日本政府観光局によれば、本年も、訪日外客数は全体として増加を続けているようです。しかし訪日外国人の出身国・地域ごとにはばらつきが見られ、また訪日旅行市場を取り巻く環境は日々変化しています。
2019年はアジアや欧米からの訪日者の消費活動がどのように変化し、日本のサービス産業にどのような影響を及ぼすのか、今後もみていきたいと考えます。
ミニ経済分析「2018年の訪日外国人消費指数の動き」(2019/7/24)
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20190724minikeizai.html
問合せ先
経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室
電話: 03-3501-1511(代表)(内線2851)、03-3501-1644(直通)
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