背景
第二次世界大戦後、人々の生活向上や雇用創出等における企業の役割の重要性が認識される一方で、企業活動が社会にもたらす負の影響についても社会的な関心が高まり、1970年代から、特にグローバルな活動を行う企業に対して責任ある行動が強く求められるようになりました。企業活動における人権尊重への関心も高まり、国際連合を中心に議論が進められ、取組の具体化が進められてきました(詳細は「これまでの国際的な取組」参照)。とりわけ、2011年に国連人権理事会で合意された「ビジネスと人権に関する指導原則」は企業活動における人権尊重のあり方に関する基礎的な国際文書となっています。
企業の人権尊重を促す様々な政策が各国でも講じられており、国境を越える活動を展開する企業は、事業を実施する国の国内法令を遵守するだけではなく、国際的な基準等に照らしてその行動が評価されるようになっています。企業規模を問わず、取引先も含む人権尊重の状況についてリスクを特定し、適切な対策を講じる必要があります。
また、企業活動における人権尊重は、いわゆる「ESG投資」を構成する「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」のうち、「社会」に区分される重要な要素の一つであり、拡大するESG資金の呼び込みの観点からもその重要性は増してきています。投資家は、企業による人権分野の取組の情報開示と、それに基づく広範なステークホルダーとの対話を期待するようになっています。
こうした昨今の企業活動と人権に関する社会的要請の高まりを踏まえ、日本企業の一層の取組を促す観点から、2020年10月、日本政府として、「ビジネスと人権」に関する行動計画(以下、「行動計画」という。)を策定しました。企業活動における人権尊重は、社会的に求められる当然の責務であるだけでなく、経営上のリスクへの対処に資するものであり、さらには、国際社会からの信頼を高め、グローバルな投資家等の高評価を得ることにもつながります。政府としては、日本企業が人権尊重の責任を果たし、また、効果的な苦情処理の仕組みを通じて問題解決を図ることを期待するとともに、そのような取組を進める日本企業が正当に評価を得る環境づくりを目指しています。
本サイトでは、こうした背景を踏まえ、人権とバリューチェーンを巡って生じうる様々な事態に日本企業が適切に対応するための助けとなるよう、「ビジネスと人権」をめぐる国際的なフレームワークや、欧米等各国の取組、関連調査やイベント情報等を紹介します。
これまでの国際的な取組
「ビジネスと人権」の国際的なフレームワークとして、様々な国際機関のガイドライン等が存在します。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
- 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(仮訳)
- 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(英語本文)
- 国連"FREQUENTLY ASKED QUESTIONS ABOUT THE GUIDING PRINCIPLES ON BUSINESS AND HUMAN RIGHTS"
OECD「多国籍企業行動指針」
- OECD「多国籍企業行動指針」(仮訳)
- OECD「多国籍企業行動指針」(英語本文)
⇒「行動指針」の普及、「行動指針」に関する照会処理、問題解決支援のため、各国に「連絡窓口」(NCP: National Contact Point、我が国においては外務省・厚生労働省・経済産業省の三者で構成)が設置されています。 - National Contact Points for the OECD Guidelines for Multinational Enterprises
OECD「責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」
- OECD 衣類・履物セクターにおける責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンス(仮訳)(経済産業省作成)
- OECD Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains in the Garment and Footwear Sector(英語原文)
- OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス(すず、タンタル、及びタングステンに関する補足書を含む)(第三版仮訳)(JEITA電子情報技術産業協会作成)(PDF)
- OECD Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains of Minerals from Conflict-Affected and High-Risk Areas(第三版英語原文)
国連グローバルコンパクト
国連責任投資原則(PRI)
- 国連責任投資原則(英語本文)
⇒2020年10月、人権に関するグローバル基準に基づき、投資家に強く期待されている事柄を提示しています。 - PRI”Why And How Investors Should Act on Human Rights”
国際労働機関(ILO)「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」
ラギー国連事務総長特別代表による「保護、尊重及び救済」枠組み報告
2015年「持続可能な開発目標」(SDGs)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
日本の取組
日本政府は、2020年10月、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等も踏まえ、「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)を策定しました。関係省庁と連携しつつ、本行動計画の産業界への普及啓発を実施しています。
また、業界団体等においても、会員企業に対する人権尊重の取組の推進や、国際的なガイドラインの周知啓発など、「ビジネスと人権」に関する取組を行っています。
(今後も追加があれば随時アップデートしますので、掲載希望の団体の方におかれては、本HP下部の窓口にご連絡ください。)
サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会
2021年11月に公表した「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」において、人権尊重への取組が進んでいない企業の半数からは、具体的な取組方法が分からないとの回答も寄せられたことや、ガイドライン整備を望む要望が多く寄せられたことも踏まえ、経済産業省として、検討会を立ち上げ、サプライチェーンにおける人権尊重のための業種横断的なガイドライン作りに取り組むこととしました。2022年3月9日に第1回検討会を開催しました。2022年夏を目途にガイドライン案のとりまとめを目指しています。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/supply_chain/index.html
検討会での議論の結果、「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」をとりまとめました。
本ガイドライン案は、2022年8月8日~2022年8月29日まで意見を募集しています。
意見募集の詳細については、電子政府の総合窓口(e-Gov)までご確認ください。
総合窓口(e-Gov)
責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)
Guidelines on Respect for Human Rights in Responsible Supply Chains(Draft)(仮訳版)
- 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン
- Guidelines on Respecting Human Rights in Responsible Supply Chains (Provisional English Translation)
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」のパンフレットも作成しました。
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料」を公表しました
- (別添1)責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料(参考資料)(PDF形式:2,046KB)
- (別添2)責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料(作業シート)(Excel形式:54KB)
検討会に関するお問い合わせ先:大臣官房ビジネス・人権政策調整室(03-3501-1539)
日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査
経済産業省では、外務省と連名で、「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」を実施することといたしました。本調査は、日本企業のビジネスと人権への取組状況に関する政府として初の調査です。
昨年10月に策定された行動計画では、その規模、業種等にかかわらず、日本企業に対して、人権デュー・ディリジェンスの導入が促されており、本調査は、行動計画のフォローアップの一環として、企業の取組状況を把握することを目的として実施されるものです。
以下でアンケート調査結果を公表しました。
https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211130001/20211130001.html
アンケートに関するお問い合わせ先:大臣官房ビジネス・人権政策調整室(03-3501-1539)
日本政府・関係機関等
- 日本政府『「ビジネスと人権」に関する行動計画』(本文)
- 日本政府『「ビジネスと人権」に関する行動計画』(概要)
- 日本貿易振興機構(JETRO)「特集 サプライチェーンと人権」
→ホームページで各国の法制化の動きを紹介。米国ウイグル強制労働防止法の関連情報についても紹介。
業界団体
- 一般社団法人 日本経済団体連合会
- 一般社団法人 日本経済団体連合会「企業行動憲章」
- 日本繊維産業連盟(JTF)「OECD衣類・履物セクターにおける責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンス(仮訳)」
関係団体
- 日本弁護士連合会「ビジネスと人権に関する取組」ウェブページ
- 公益財団法人国際民事法センター” 人権尊重についての企業の責任-解釈の手引き-”
- 公益財団法人国際民事法センター” 人権の解釈2.0 企業活動の指針”
- 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会/国際労働機関(ILO)「国際労働基準と持続可能性に配慮した調達ハンドブック」
関連イベント情報
「ビジネスと人権」関連の各種イベントの情報を以下ご紹介します。
・法務省法務総合研究所では、「ビジネスと人権」をテーマとした公開シンポジウムを2023年7月7日に開催します。
・経済産業省の委託事業にて、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に関するセミナーを実施。
2023年1月~2月にかけて、計6回開催。
・経済産業省中小企業庁では、人権・CSR(企業の社会的責任)に関する講座・セミナーを行っています。
- 中小企業庁委託事業(人権・CSR関係)のご案内
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【中堅・中小企業向け】「ビジネスと人権」セミナーを全国9地域で開催~国際的に関心の高まる人権への対応 大切な顧客を失わないために~(オンラインセミナー)
・駐日EU代表部及び日欧産業協力センターと共催で、「ビジネスと人権」をテーマとしたウェビナーを2022年6月15日に開催します。
関連リンク(ウェブサイト・資料)
日本政府・関係機関等
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日本政府では「ビジネスと人権」の普及・啓発活動について関係省庁が連携して取り組んでおり、その一貫として各省庁がそれぞれのホームページで情報発信しています。
外国政府
欧米の各国政府も「ビジネスと人権」の普及・啓発活動に取り組んでおり、各国の外交・経済関係の行政機関を中心に、それぞれのホームページで情報発信しています。
米国
- 国務省 “Business and Human Rights”
- 国務省 “Business and Human Rights FACT SHEET”
- 国土安全保障省 税関・国境取締局 “Forced Labor”
EU
英国
ドイツ
- 連邦経済エネルギー省 “Network of National Contact Points for implementing the OECD Guidelines”
- 連邦労働社会省 ”CSR Made in Germany”
フランス
お問合せ先
・当該ページに関するお問合せ:大臣官房ビジネス・人権政策調整室(03-3501-1539)bzl-business-jinken★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。
・National Contact Point に関するお問合せ:貿易経済協力局投資促進課(03-3501-1662)
・中企庁のセミナー等に関するお問合せ:中小企業庁事業環境部財務課(03-3501-5803)
最終更新日:2023年6月19日