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内国民待遇について扱われた仲裁事例
S.D. Myers, Inc.対カナダ、UNCITRAL仲裁規則に基づく手続、NAFTA、部分的仲裁判断、2000年11月12日
判断の要旨
a)国内投資家と外国投資家は、両者が同じ経済・事業分野に属する場合、「同様の状況下」にあると見なされる。
b)措置導入にあたっての政府の「意図」よりも、当該措置が実際に投資事業へ及ぼす「影響」が、政府措置の内国民待遇違反を認定する際には重視される。
S.D. Myers, Inc.対カナダ、UNCITRAL仲裁規則に基づく手続、NAFTA、部分的仲裁判断、2000年11月12日。
【判断の要旨】
a)国内投資家と外国投資家は、両者が同じ経済・事業分野に属する場合、「同様の状況下」にあると見なされる。
b)措置導入にあたっての政府の「意図」よりも、当該措置が実際に投資事業へ及ぼす「影響」が、政府措置の内国民待遇違反を認定する際には重視される。
米国のS.D. Myers社は、カナダに子会社を設立し、カナダで取得したPCB廃棄物を米国で処理する事業を企画していた。カナダには、競合他社が存在したが、S.D. Myers社の米国工場は、PCB廃棄物の所在地から近いところに立地しており、他社に比較してのコスト優位があった。同社は、米国環境庁から輸入許可を得ていたものの、カナダ政府のPCB輸出禁止措置によって事業継続が不可能となった。同社は、輸出禁止措置が、NAFTAの「締約国は、同様の状況下において、他の締約国の投資家へ自国の投資家よりも不利ではない待遇を与える」旨規定した内国民待遇に違反する等として仲裁を申立てた。
仲裁廷は、内国民待遇違反の主張を認めた。「同様の状況下」の解釈にあたり、米国とカナダの両国が加盟しているOECDのDeclaration on International Investment and Multinational Enterpriseを参照し、当該外国投資家が、国内投資家と同じ経済・事業分野で活動しているかどうかを検討するべきであるとした。さらに、内国民待遇の規律に反するかどうかにあたっては、「保護主義的な意図」は決定的ではなく、外国投資家に比して不均衡な便益を与えるか等「実体的な影響」が重視されるべきであると述べた。カナダ政府が正当化根拠として主張した国内PCB処理能力の維持という目的については、その正当性を認めたが、他の合法的手段があったとしてカナダの主張を退けた。