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投資協定・EPA投資章 安心して海外へ投資したい!

投資協定で扱う主な事例&手続の概要

このようなトラブルは投資協定の対象になります!

【事例1】 国際水準から逸脱した恣意的介入を受けた…

アルゼンチンにある米国企業の子会社が、アルゼンチン某州の水道サービスを落札。しかし、州政府は契約を履行せず、水道料金の引上阻止などを行ったため、子会社は破産。州政府は契約不履行を理由に契約を解除した。
これに対し、米国企業が投資協定にもとづいて仲裁に申立て、仲裁廷は、アルゼンチンの投資協定違反を認め、約1億6500万ドルの賠償を命じた。

公正衡平待遇

【事例2】 収益を得る機会を奪うような措置がとられた…

キプロス企業の設立したハンガリー法人が、政府機関と空港拡張工事および運営の請負契約を締結。しかし、工事の終了後、ハンガリー政府の政策変更により、契約は無効とされ、政府の指定した別法人が運営の請負者となった。
仲裁廷は、ハンガリー政府の措置を収用と認定し、約760万ドルの賠償支払いを命じた。

収用

【事例3】 相手国政府が契約を履行しなかった…

エクアドルの国営企業と電力購入契約を締結して電力供給を行っていたエクアドル企業の株式を、米国企業が取得し子会社とした。その後、エクアドルの国営企業が解散し、その権利義務を継承したエクアドル政府が電力代金の支払いを拒否。
エクアドル政府の代金不払いについて、米国企業およびそのエクアドル子会社は、国内裁判所で争ったが、却下されたため、国際投資仲裁へ申立てた。仲裁廷は、エクアドル政府の電力購入契約の不履行が投資協定違反となると判断し、賠償を命じた。

約束遵守(アンブレラ)条項

この他にも、次のような場合、投資協定、投資章の対象となります。 ※ただし、協定により内容は異なるほか、一定の例外分野が設けられている場合があります。

  • ・一度受けた事業許可が撤回された・・・
  • ・現地資本の企業や他国企業との間で差別的な待遇を受けた・・・
  • ・規制強化により、事業を存続できなくなった・・・
  • ・原材料の現地調達を要求された・・・
国際投資仲裁の事例を調べる

相手国との間で投資関連のトラブルが発生した場合の対処法は?

①ビジネス環境整備小委員会 投資先の国のビジネス環境に関する企業の具体的な懸案事項について、両国政府や関係機関を交えて官民で議論することが可能です。相手国のビジネス環境の改善や投資をめぐる問題の解決を図ることができます。

②国際投資仲裁 投資先の国が協定の義務に違反した場合、投資家が政府を直接訴えることが可能です。仲裁手続では、相手国の恣意的介入を避けることができます。 (実際に訴えなくとも、相手国との交渉を有利にする側面もあります。)

国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)手続とは?

  • ・投資協定/投資章において規定される手続で、投資家と投資受入国との間で投資紛争が起きた場合、投資家が当該紛争を国際仲裁等を通じて解決するものです。多くの投資協定、EPA/FTA投資章では、同手続が含まれています。
  • ・投資家は投資受入国との間で紛争が起こった場合、投資受入国の司法手続きにより解決するか、またはISDS手続に付託するかを選択することが出来ます。
  • ・仲裁裁判所は、投資受入国の協定違反及び投資家の損害を認めた場合、賠償支払いを命じることが出来ますが、投資受入国の法令や政策の変更を命じることは出来ません。
  • ・ISDSとは、「国家と投資家の間の紛争解決(Investor-State Dispute Settlement)」の英文頭文字を略したものです。

なぜ投資受入国の司法手続きによる解決だけではダメなのか?

  • ・投資家は、投資受入国との間で紛争が起こった場合、投資受入国の裁判所が投資受入国政府等に対して有利な判断を下しはしないか、という中立性に対する不安があります。
  • ・投資協定/投資章において、投資受入国の国内裁判所に加えて、国際仲裁において紛争を解決することができると定めれば、中立的な場で判断を受けられるため、投資家及びその本国にとっては、投資活動を実効的に保護する手段を確保することができます。
  • ・中立的な紛争解決の場を用意することで、投資家の投資が確実に保護されるという期待を高めることにより、外国からの投資が促され、投資受入国にとっても経済発展につながります。
  • ・投資紛争を投資家との間で直接処理する手段を更に用意することで、投資紛争が外交問題化することを避けることができます。

投資協定、投資章に基づく国際仲裁とは?(一般的な例)

(1)仲裁(手続)規則

仲裁規則は、仲裁人の選定や審理手続などの仲裁に関する手続を定めています。投資家は、国際仲裁に紛争を付託する場合、投資協定/投資章が規定する複数の仲裁(手続)規則(次項参照)の中から、当該仲裁で利用するものを選択します。

(2)仲裁裁判所の構成

3人の仲裁人からなります。仲裁人は、紛争当事者である投資受入国及び投資家が各一名ずつ指名し、第3の仲裁人は原則として紛争当事者間の合意で選定されます。

(3)適用する法

仲裁裁判所は、投資協定/投資章及び関係する国際法に従って判断します。投資が適法になされたか否か等については投資受入国の国内法に基づいて判断します。

(4)仲裁裁定

仲裁裁判所の裁定は仲裁人の多数決で決定されます。投資協定/投資章に基づく国際仲裁に上訴の仕組みはありませんが、無効審判の手続は存在します。

(5)救済措置

投資受入国の協定違反により投資家に損害が生じたことを認定した場合、仲裁裁判所は、損害賠償や原状回復(例は少ない)を命じることができます。
国際仲裁で示しうる判断の内容は、損害賠償や原状回復に限定されており、投資受入国の法令や政策の変更を命じることはできません。

主な仲裁規則(投資家が選択可能な仲裁規則は、協定によって異なります)

仲裁機関の規則:仲裁機関に付属する仲裁規則

投資紛争解決国際センター(ICSID)の仲裁規則

  • ・仲裁は原則として投資紛争解決国際センター(International Center for Settlement of Investment Disputes: ICSID)で行われます。世銀によるイニシアティブにより1965年の設立条約により設置されました。条約は現在、147か国が締約国。所在地は米国(ワシントンD.C.)。
  • ・世銀グループの一つですが、事務局は行程管理などの手続的な側面支援を行うのみであり、仲裁判断には加わりません。世界銀行による仲裁判断への影響は一切ありません。

国際商事会議所(ICC)、ストックホルム商業会議所仲裁協会(SCC)等の仲裁規則

  • ・仲裁地は指定されておらず、当事者の合意に基づき決定されます(当事者の合意があれば、どこで行っても良い)。合意がない場合には仲裁機関が決定します。
  • ・事務局は行程管理などの手続的な側面支援を行います。仲裁判断には加わりません。

アドホック仲裁の規則:仲裁機関に付属しない仲裁規則

国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)の仲裁規則

  • ・仲裁地は指定されておらず、当事者の合意に基づき決定されます(当事者の合意があれば、どこで行っても良い)。合意がない場合には、仲裁裁判所が決定します。
  • ・UNCITRAL自体はルール(仲裁手続規則)を提供する機関であり、国連は仲裁判断に影響を及ぼさず、行程管理などの手続的な側面支援も行いません。
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