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投資協定・EPA投資章 安心して海外へ投資したい!

主要なルール別の仲裁事例

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① 最恵国待遇・内国民待遇

  • ・最恵国待遇(Most-Favored-Nation Treatment):相手国の投資家及びその投資財産に対して、第三国の投資家に与えている待遇より不利でない待遇を与えること。
  • ・内国民待遇(National Treatment):相手国の投資家及びその投資財産に対して、自国の企業に与えている待遇より不利でない待遇を与えること。

内国民待遇について扱われた仲裁事例

米国企業のA社はカナダに子会社を設立し、カナダで取得したPCB廃棄物を米国で処理する事業を企画。A社は米国環境庁から輸入許可を得ていたものの、カナダ政府のPCB輸出禁止措置によって事業継続が不可能となった。同社は輸出禁止措置が内国民待遇に違反する等として仲裁を申し立てた。
仲裁廷は内国民待遇違反の主張を認めた。

② 公正衡平待遇(fair and equitable treatment)

投資財産の保護に対して慎重な注意を払う義務、適正な手続きを行う義務、裁判拒否の禁止、恣意的措置の禁止、投資家の合理的期待を裏切らない義務などを含む。仲裁判断において、頻繁に争われる項目。

公正衡平待遇について扱われた仲裁事例

オランダ企業であるB社(日系企業子会社)は、チェコ共和国のかつての国営C銀行の株式を46%保有していた。チェコ国内におけるC銀行を含む国営銀行4行は多額の不良債権を抱えており、チェコ政府はC銀行以外の3行に公的資金投入等の財政支援を行ったが、C銀行に対しては行わなかった。その結果C銀行の経営が悪化し、別の国営銀行に譲渡された。
仲裁廷は、合理的理由無くC銀行を公的資金の対象から除外したことの差別性等が、投資家の正当かつ合理的な期待に違反することを指摘し、公正衡平待遇義務に違反すると判断した。

③ 収用の制限と適切な補償

政府による収用(国有化)を原則禁止。①公共目的のため、②正当な法手続の下、③差別的でない方法により、④迅速かつ実効的に補償を行う場合のみ、収用を認める。
また、補償は、公正な市場価格に基づいて行うことを義務づける。
なお、所有権等の移転を伴わなくとも、裁量的な許認可の剥奪や生産上限の規定など、投資財産の利用やそこから得られる収益を阻害するような措置も収用に含まれる。

収用について扱われた仲裁事例

スペイン企業であるD社は、メキシコ州政府の廃棄物処理事業を落札。事業許可は5年間であったが、同社は長期間事業を営むことを前提としていた。しかし、メキシコ政府は規制の違反等を理由にD社の許可更新を拒否した。
仲裁廷はメキシコ政府がD社の規制の違反は軽微なものと認識しており、許可更新拒否の本当の理由は地域住民の反対にあったと認定した上で、メキシコ政府のD社への措置は収用にあたると判断した。

④ 契約などの約束遵守(アンブレラ条項)

インフラプロジェクトや資源開発などにかかる許可、投資インセンティブの付与など、投資家との契約などを通じて政府が負った約束の履行を義務づける。政府が約束に違反した場合、契約違反に基づく国内裁判に加え、投資協定違反に基づく国際仲裁を利用することが可能となる。

アンブレラ条項について扱われた仲裁事例

米国企業のE社は、アルゼンチンにおけるガス事業の民営化を受け、ガス配送事業を開始した。E社は同国に投資するにあたり、ドル建てかつ米国消費者物価指数の変動に対応する料金制度等が重要な判断要素であったと主張。これが金融危機を受けた様々な措置のため覆されたことがアンブレラ条項に違反するとして仲裁に付託した。
仲裁廷はアルゼンチン政府の行為について、政府に起因する法律上の変化の結果であり、政府だけが行うことのできる行為であると判断し、アンブレラ条項違反を認めた。

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