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アンブレラ条項について扱われた仲裁事例
判断の要旨
Sempra Energy International対アルゼンチン、ICSID事件番号ARB/02/16、米国・アルゼンチンBIT、仲裁判断、2007年9月28日。
【判断の要旨】
通常の商業的な契約違反は、条約違反とはならない。両者の区別は、単なる契約の相手方としての契約違反であるか、主権国家の権能又は力によって実行された行為を伴うかどうかによる。
米国企業のSempra社は、アルゼンチンにおけるガス事業の民営化を受け、ガス配送事業を開始した。Sempra社は、投資判断にあたっては、同国の整備した法令に基づく、ドル建てで、かつ米国消費者物価指数の変化に対応する料金制度等が重要な要素であると主張し、これが金融危機を受けた様々な措置のために覆されたことが、アンブレラ条項に違反する等として仲裁に付託した。
仲裁廷は、上記2つのSGS判断等を参照し、通常の商業的な契約違反は、条約の違反とはならないとの考えを示した。さらに、両者の区別について、単なる契約の相手方としての契約違反であるか、主権国家の権能又は力によって実行された行為を伴うかによるとした。その上で、アルゼンチン政府の行為について、政府に起因する法律上の変化の結果であり、政府だけが行うことのできる行為であると述べた。結論として、アンブレラ条項違反を認めた。