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公正衡平待遇について扱われた仲裁事例
判断の要旨
Saluka Investments BV(The Netherlands)対チェコ、UNCITRAL仲裁規則に 基づく手続、オランダ・チェコBIT、部分的仲裁判断、2006年3月17日 。
【判断の要旨】
公正衡平待遇義務を遵守するためには、政府は、①一貫性のある、透明で、合理的で、無差別な行動をとるべきであり、②投資家の合理的期待を阻害してはならない。
オランダ企業であるサルカ(日系企業子会社)はチェコのかつての国営銀行IPBの46%の株式を保有していた。IPB及び国営の3つの銀行は、金融市場において重要な地位を占めていたが、いずれも多額の不良債権問題を抱えていた。チェコ政府は、3つの国営銀行に公的資金投入などの財政支援を行う一方、同様の状況にあったIPBに対しては財政支援を行わず、サルカは政府との折衝の機会も実質的には与えられなかった。IPBの経営がさらに悪化したため、中央銀行が公的管理に踏み切り、IPBはその後別の国営銀行に譲渡された。
仲裁廷はオランダ・チェコBITの規定する公正衡平待遇義務の内容について、外国投資家の合理的期待を阻害しないことが要求されるとし、投資家は国家が明らかに矛盾した、不透明な、不合理的な又は差別的な態様で行動しないことを期待する権利があると述べた。その上で、仲裁廷は、合理的理由なくIPBを公的資金の対象から除外したことの差別性、及びチェコ政府の不誠実で不透明な折衝態度が、投資家の正当かつ合理的な期待に反することを指摘し、公正衡平待遇義務に違反すると判断した。
*本件は、公表されているものの中で、日系企業がBIT仲裁を利用した唯一のケースである。