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健康への影響は?電磁界による健康影響はあるのですか?

人への健康影響の評価方法

 電磁界の人への影響を検証するためには、「電磁界」と「人への健康影響」の因果関係の有無を様々な研究結果から総合的に検証する必要があります。それらの研究方法には、大まかに「疫学研究」と「生物学的研究」の二種類があります。
 「疫学研究」は、電磁界へのばく露が人の健康に及ぼす影響を、その発生頻度など、社会で観察される現象に基づいて研究する学問 であり、一方の「生物学的研究」は、その関連性のメカニズムや人への健康影響があるかどうかを動物実験や細胞実験で解明する学問です。
 これらの評価手法により、「電磁界」と「人への健康影響」の因果関係の有無を検証した結果、神経刺激作用等の科学的に立証されている影響と、小児白血病との関連性等、現段階では科学的な結論が出ていない影響の二つに分けられることがわかっています。前者は短期的ばく露で、主としてばく露されている間のみ見られる影響であり、後者は長期的ばく露により、がんなどの病気が引き起こされる影響と言えます。

電磁界による健康影響の評価方法

科学的に立証されている人への影響(短期的ばく露影響)

 身体が非常に強い超低周波電磁界にばく露されると、電磁誘導によって体内に電流が発生し、その影響により神経が刺激されることがあります。これを刺激作用といいます。
 人の体内には、もともと脳の神経活動や心筋の活動による生理的な電流が流れています(内因性電流といい、脳電図(脳波)・心電図として観測することができます)が、これと同程度あるいはそれ以上の大きさの電流が電磁界により体内に発生すると、神経や筋肉等の活動に影響を与える刺激作用により健康に悪影響を及ぼす恐れがあると考えられています。
 この電流に対して人体の中で最も敏感な組織は目の網膜と言われています。例えば、一般の方々が日々の生活の中で遭遇するレベルを数百倍以上の非常に強い交流磁界に頭部がばく露されると、目を閉じていても何か光が見えるような現象(磁気閃光といいます)を感じることがわかっています。

科学的に立証されていない人への影響(長期的ばく露影響)

 生活環境での電磁界への長期的ばく露影響については、これまで多くの科学者が研究を行ってきており、その多くが小児白血病に焦点をあててきましたが、小児白血病との関連性等、生活環境での電磁界による健康影響があるという確実な証拠は見つかっておりません。しかし、健康影響が確実に無いという科学的な証拠を見つけるのは、商用周波電磁界に限らず不可能なことです。

 以下に長期的ばく露影響に関する研究例を紹介します。

・疫学研究では・・・
 電磁界と健康に関する個別の疫学研究は、小児白血病との間に関連性が無かったという報告もあれば関連性があったという報告もあり、結論はまちまちです。2000年に発表されたスウェーデンのアールボム博士等によるプール分析では、居住環境としては相対的に強い強度(0.4μT以上)の磁界ばく露と小児白血病との間に、弱いながらも統計的に意味のある関連性が見られることが報告されています。しかし、著者らは、ばく露の高い群と低い群で調査への参加率が異なったことの影響を受けている可能性があると言っています。
*1 過去の疫学研究で得られた各々のデータをまとめて再解析する手法です。
*2 国立環境研究所 兜博士が2006年に発表した疫学調査によると、我が国で0.4μT以上の居住環境に住んでいる人の割合は1%未満と報告されています。なお、長期間にわたる平均値をさまざまな方法で推定した区分であり、実際の磁界の強さそのものではありません。

・生物学的研究では・・・
 生物学的影響を検討した研究には、ラット等の動物を用いたがん・生殖・神経系等への影響に関する研究と、細胞を用いて遺伝子等への影響を調べる研究があります。現時点では居住環境における商用周波電磁界が人の健康に悪い影響を及ぼすという再現性のある結果は得られていません。
 動物実験や細胞実験の生物学的研究では、一回の実験結果のみで判断するのでは無く、一般に実験を数回繰り返し行い同様の結果を示すこと(反復可能性)や別の研究者が同様な結果を示すこと(再現性)等から、影響の有無が判断されています。
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