国際機関の見解国際的な見解はどうですか?
世界保健機関(WHO)では・・・
国連の一機関であるWHOは1996年5月に国際電磁界プロジェクト(The International EMF Project)を発足させました。プロジェクトの目的は、電磁界ばく露の健康リスクを評価することです。我が国も参加しています。
なお、WHOではこれまでに超低周波電磁界(300Hzまで)について評価を終了しており、ここで主に扱う商用周波電磁界(50/60Hz)が含まれています。
国際電磁界プロジェクトの1つとして、WHOの付属機関である国際がん研究機関(IARC*¹)は、2002年に超低周波電磁界の人への発がんハザード*²を評価したIARCモノグラフ第80巻を発刊しました。そして、超低周波磁界は「人にとって発がん性があるかもしれない(グループ2B)」、超低周波電界は「人への発がん性に関して分類できない(グループ3)」と判断しました。
IARCの発がんハザード評価とは、その物質や環境ががんの原因となるかどうかあるいはその可能性の有無に関する科学的な証拠の強さ(確実さ)を評価して分類したものであり、がんの引き起こしやすさを評価したものではありません。ハザードは、定量ではなく定性的に評価されています。例えば、「人にとって発がん性がある(グループ1)」に分類されている紫外線、太陽光、アルコール飲料、加工肉などは、適量以下であれば健康影響を過度に気にする必要はありません。ここでの評価の手順は、まず、人における疫学研究結果(証拠)をもとに発がんハザードがあるかどうか評価します。証拠が限定的であったり、不十分な場合は、生物学的研究結果(証拠)をもとに総合的に発がん性を分類します。従来、発がんハザードの分類は5段階でしたが、2019年1月に、モノグラフの前文の改定版が発表され、「グループ4:おそらく発がん性はない」は廃止され、4段階の分類となりました*³(次表参照)。

(https://www.iarc.who.int/news-events/the-iarc-monographs-updated-procedures-for-modern-and-transparent-evidence-synthesis-in-cancer-hazard-identification

■IARCによる発がんハザード分類
WHOは、2005年10月に低周波(100kHzまで)電磁界の健康リスクを評価するために、専門家による「タスクグループ」を招集しました。タスクグループは、IARCモノグラフ第80巻を含め、これまで発表された膨大な科学論文のレビューを行い、その見解を「環境保健クライテリア(EHC)モノグラフNo.238(WHO, 2007)」として、2007年6月に発刊しました。
WHOは、このEHCに基づいて「ファクトシート№322 超低周波の電界及び磁界へのばく露(ファクトシートは一定期間を過ぎると末梢されますので、現在のWHOのウェブサイトには存在していません)」を発表し、こちらのように健康リスク評価を行っています。
環境省では上記EHCを日本語に翻訳しています。
https://www.env.go.jp/chemi/electric/material/ehc238_j.pdf
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)では・・・
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP*4)では、世界保健機関(WHO)の電磁界ばく露の健康リスクの評価結果(後述)を受けて、2010年に1Hzから100kHzまでの時間変化する電界、磁界、電磁界に対して短期的なばく露影響から一般の人と労働者を防護するガイドラインを設定しています。このガイドラインでは、商用周波電磁界に関するばく露制限値を設定しており、その値は、電磁界によって引き起こされる磁気閃光や中枢および末梢の神経への刺激を根拠として、刺激作用(「科学的に立証されている人への影響(短期的ばく露影響)」参照)によって健康に悪影響が起こるレベルより十分に低い値に設定されています(次表参照)。

なお、発がん等を含む長期的なばく露影響に関しては、小児白血病との関連を示唆する疫学研究結果を尊重する必要性を認めながらも、磁界と小児白血病の因果関係は確立されておらず、また、その他のいかなる長期的ばく露影響の因果関係も確立されていないことを根拠に、ガイドラインの根拠とするには科学的証拠が弱すぎると判断しています。
■ICNIRPガイドラインによる一般の人へのばく露制限値(参考レベル)
健康リスクの評価に基づき「WHOのガイダンス」としてまとめられ、各国の政府機関や産業界に対し、以下のように提言しています。
WHOでは、電磁界の健康リスクへの見解を、一般の人向けに、ファクトシート(Fact Sheet)として発表しています。上記、ファクトシート№322については、一般財団法人電気安全環境研究所電磁界情報センターが日本語に翻訳しています。
(https://www.jeic-emf.jp/assets/files/pdf/faq/Factsheet_No322.pdf)